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マンスリーコラム

その日本語,相手を不快にします 21
川本 信幹(日本語検定委員会研究主幹)

2011年8月

「いずれ」「そのうち」は慎重に

学生時代、ゼミの教授に、「君うちへ話しに来給え」と誘われ、「いずれ折を見て伺います」と答えたところ、即座に「そういう返事をするのは、来る気がないという意思表示なんだな」と言われました。

後で、友人に言われました。「君、あの時せめて、『ではお言葉に甘えて、今度の日曜日に伺います』とでも答えておけば、覚えがめでたくなり、やがて後継者の候補になれたかもしれない」と言われ、後悔したものです。


会社で、上司に同じことを言われてのこのこ出掛けて行ったら奥方に怖い顔をされることもありますから上司の言葉が、本心か社交辞令かを聞き分ける必要があります。 ビジネスのやりとりの場面では、「いずれ・そのうち・折を見て・近いうち」などは、慎重に使わなければなりません。

例えば、取引先から具体的な提案あるいは要求が出された場合、 「その件につきましては、いずれ折を見て上司に相談しておきます」
と応じると、相手が、ああこれは婉曲的な断りだな、とすんなり解釈して引き下がってくれればいいのですが、なんだずいぶん曖昧な返事をする奴だと不快感を持って帰るかもしれません。「いずれ」とか「折を見て」とかは、相手にそういう印象を与える恐れのある言葉なのです。

逆に、相手にそういう返事をされた場合は、「ああ、これは脈がないな」と諦めて、提案・要求の内容を検討し直すか、取り下げて撤退する潔さも必要です。

曖昧と言えば、相手から何かの書類をメールで送るように言われて、
「いずれお届けしますので、しばらくご猶予ください」
などと答えるのは最低でしょう。「明日、午後三時までにはメールでお送りしますので、よろしくお願いいたします」といった程度のことは必ず言わなければなりません。

また、「いつ来社いただけますか」ときかれ「近いうちに参上いたします」などと言っていては、競争相手にしてやられます。
「明後、水曜日午前十時に、課長ともども参上いたしますので、よろしくお願いいたします」
という返事が咄嗟に出てくるようでなければ、この時世の世渡りはできませんね。

 

 

 

川本 信幹(日本語検定委員会研究主幹)

最近著に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。

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