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マンスリーコラム

その日本語,相手を不快にします 28

2012年3月

お詫びの言葉出ぬ電話受付

我が家の暖房(冷房兼用)が突如動かなくなった。テレビでコマーシャルを大々的にするほどのブランドものであるが、購入設置した近所の電気屋さんが廃業したため、その会社の東京西サービスセンターへSOSの電話をした。
 数分かけた説明を聞いた結果、その社員の返答は以下のとおりであった。


「ただ今、担当者が外出中ですので帰ってまいりましたら伝えておきます。お客様のお名前と電話番号をお願いします」


確かにマニュアル通りの応対ではあろうが、こちらはこの寒さで暖房が止まって難渋しているのである。なんとか工夫して対応してもらえないものか、と言ってみても電話番の社員にそれ以上の知恵はないらしい。

それにしても電話に出た社員の口から「申し訳ございません」とか、「当社製品でご迷惑をおかけします」といった詫びの言葉が聞かれなかったのはどういうことであろうか。大きな会社も末端までは血が通いにくいのかもしれない。

 

そこで、その冷暖房装置を購入した時にもらった説明書に「消費者相談室」があるのを見て、早速電話してみた。

五分ばかりボタンを押し続けて、やっと担当者につながった。

ところが、その担当者の処理は、誠に見事なものであった。応対の言葉を完全にとはいかないが、ほぼ実際に近く再現してみよう。


「分かりました。当社製品の不具合で大変ご迷惑をおかけします。お住まいのK市内には代理店、つまり当社の製品を専門に扱っている店が二つ、お隣のF市西部に二つ、さらにT市には五つございますので、お宅様に近いほうから順次交渉して、人手のあり次第急行させます。念のために貸出用の電熱暖房装置も持参させますので、修理が長引くようならご利用ください。では、改めてお伺いできる代理店からお電話させますのでよろしくお願いします」


いやはや、サービスとはかくあるべしといってもよいほどの言葉遣い、心遣い、段取りの付け方である。

結局、二十分後には 同じ市内の代理店から電話があり,二時間後に来宅、四十分ばかりで修理終了となった。東京西サービスセンターから電話があったのは、その後である。

まさしく後の祭りである。

 

 

 

川本 信幹

著書に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。

2011年11月逝去   *この原稿は、2010年に執筆したものです。

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