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マンスリーコラム

その日本語,相手を不快にします 24
川本 信幹(日本語検定委員会研究主幹)

2011年11月

「はー、なんとか…」は顰蹙

会社・団体の課長・部長クラスの方にお目にかかると、よく「最近の若い者は……」という愚痴をこぼされます。会社の中では言いにくいので、外部の人間についつい、ということになるのでしょう。

その愚痴の一つに「どうも気のない返事が多くて、やる気があるのかないのかよく分からない」というのがあります。 例を挙げましょう。課長と若い社員の対話です。


「きみ、この仕事をきみに任せるから、企画書を書いてみたまえ」 


「はー」


「あす午後二時までにできるかな」


「はー、なんとか……」


課長はここで「きみ大丈夫かね」と言いかけてぐっと言葉を呑み込みます。 傍で聞いていても「もっとなんとか言いなさいよ」と気合を入れたくなりますね。

 

まず「はー」がいけません。息を吐きながらの発音ですから、まさに気の抜けた返事です。いまさら言うまでもありませんが、ここは当然ながら「はい」と歯切れよく発音したいものです。

次に「なんとか……」もはっきりしませんね。「なんとかなります」なのか、「なんとかします」なのか。「なんとかやってみます」なのか、「なんとかがんばります」なのか。いずれにしても、「なんとか」がくっついているばかりに曖昧さがつきまといます。

 

では、若い社員はなんと返答すればいいのでしょうか。

相手が常に顔突き合わせている課長でしたら、最初の「はー」の部分は、次のような言い方でいいでしょう。


「はい。承知しました。私の能力では荷が重いと思いますが、ぜひやらせていただきます。ご指導をお願いします」

 

二つめの返答は、
「はい。精一杯がんばって間に合わせます」

 

といったところでしょう。

 

課長より上位の役職者が若い社員に直接仕事を指示することはあまりないでしょうが、もしそうならば、「思いますが」は「存じますが」と言います。また「がんばって」も、少し改まって「努力して」と言いましょう。

さらに、末尾の「間に合わせます」は、どちらの場合でも「間に合わせたいと思います」と言わないように気をつけましょう。

 

 

 

川本 信幹(日本語検定委員会研究主幹)

最近著に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。

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