ホーム > 日本語を楽しむ > マンスリーコラム

マンスリーコラム

その日本語,相手を不快にします 11
川本 信幹(日本語検定委員会研究主幹)

2010年10月

見苦しい「部分」の多用

第四回目の「『的』の多用は語彙不足の象徴」と題して書いた文章の中で「部分」という言葉の使い方に少しだけ触れました。 先日、読者の方から直接お手紙で「『部分』の使い方についてもう少し詳しく説明してください」というご要望をいただきました。 たまたま、テレビのインタビューでこちらが呆れるほど「部分」を安売りした発言がありましたので、それを筆録してありました。今回はそれを材料にして、ご要望へのお答えに代えます。


私が筆録したのは、次のような発言です。


只今ご質問いただきました、商品の値下げ販売の①部分につきましては、当社でも内部で意見の一致しない②部分もございますので、当社と小売店連合会側と検討いたし、協議がまとまった③部分で発表させていただきます。当社の対応の④部分で、至らない⑤部分がございましたらご容赦いただきたいと存じます。】


傍線を付け、番号を入れたら、なんだか試験問題のようになりましたが、こうして文字化してみますと、随分見苦しいでしょう。 そこであなたに挑戦していただきます。この五つの「部分」という言葉をすべて他の単語に置き換えてみてください。


 さて、以下に私の答案を掲げます。
 もっとも、あなたの答案がこれと全く同じである必要はありません。


只今ご質問いただきました、商品の値下げ販売の①問題につきましては、当社でも内部で意見の一致しない②もございますので、当社と小売店連合会側と検討いたし、協議がまとまった③段階で発表させていただきます。当社の対応の④仕方で、至らない⑤がございましたらご容赦いただきたいと存じます。】


最近はテレビなどに出る人たちが流行に乗り遅れまいとしきりに「部分」を使いますが、本来の意味は「全体を小分けにした一つ」(新明解国語辞典)ですから、インタビュ―の発言者は相当無理な使い方をしているわけです。 

 

「部分」を全く使わないですむところを「部分」一語で済ませるのは どういうことでしょうか。一つは、文脈の中で最適な言葉を使えるほどの語彙力がないこと、もう一つは、言語感覚(言葉に対する感覚)が鈍磨していることでしょう。あなたは大丈夫ですか。

 

 

川本 信幹(日本語検定委員会研究主幹)

最近著に「みがこう,あなたの日本語力」(東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。

  • 前のページへ
  • コラム一覧へ
  • 次のページへ

日本語検定を受検される方へ

個人受検のお申し込み

団体受検のお申し込み

受検の流れ

データから見る日本語検定

検定データ

日本語検定問題に挑戦!

日本語検定の問題とはどんなもの?

いますぐ検定問題にチャレンジしてみよう!

検定問題に挑戦

教材のご紹介

日本語検定公式問題集

配信コンテンツ

日本語ひとくちエッセイ


ブログパーツ配布中!日本語検定オリジナルブログパーツ配布中!ブログに貼って楽しもう!


日本語検定メールマガジン



第3回日本語大賞審査結果