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マンスリーコラム

その日本語,相手を不快にします 11
川本 信幹(日本語検定委員会研究主幹)

2010年12月

不信招く「多分」と「絶対」


課員 「課長、部長に雷を落とされました」


課長「なんだって、落とされたんだ」


課員 「部長に『君らが考えている企画は実現できるかね』と聞かれましたので、『多分大丈夫だと思います』と答えた途端『ばかやろう』ときました」


課長 「そうだろうな」


課員 「部長に言われました。『君の答え方には、三つ問題がある。まず〈多分〉がいけない。そういう曖昧な表現では、相手を納得させることはできない。二つめは〈大丈夫〉だ。この言葉にも具体性がない。的確でないと言ってよい。三つめは〈と思います〉だな。これではまるで他人事みたいだ。身内相手だからいいが、ビジネスの相手にこんなことをいったら、信用を失ってしまうぞ』とやられました」


課長 「それで、どうした」


課員 「『以後、気を付けます』と言って、逃げ帰りました。背中から、『もっと勉強しろ』という言葉が飛んできました」


課長 「そうだろうな」


課員 「ところで、課長、こういう場合、何と言えばいいんでしょうか」


課長 「自分で考えろと言いたいところだが、即決しておこう。私も先輩から教育されたんだがね。そういう場合は、君の発言を言い替えるだけではだめだ。」


課員 「ということは?」


課長 「部長が『他人事みたいだ』とおっしゃったのがヒントだな。ちょっときざな言い方になるが、例を挙げてみよう。 

【はい、会社のプライドをかけて課長以下課員一同実現に向けて頑張っております】

こう言えば、部長も『おお、そうか、しっかり頑張りたまえ』くらいなことをおっしゃるに違いない。期限のある仕事の場合、間に合うとか、間に合いそうもないとかいうことを軽々しく口にしてはいけない」


課員 「なるほど、私の発想が完全に間違っていました。いろいろなものの言い方を勉強しなければいけませんね」


課長 「もう一つ大事なのは、『絶対』という言葉を軽率に使ってはいけないことだ。ビジネスの相手に使ったら、必ず責任を取らなければならなくなる。使えるのは、それこそ絶対大丈夫な時だけだ」

 

 

 

川本 信幹(日本語検定委員会研究主幹)

最近著に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。

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