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マンスリーコラム

その日本語,相手を不快にします 35

2012年10月

明日、朝イチで伺います

「川本さんは、もう引退されたようですから」というわけで、住居のある団地の管理組合の役員を引き受ける羽目になりました。

となると、電気工事の会社、住宅補修の建築会社、造園会社、銀行などなど様々な相手とつき合わなければなりません。

 

先日も、ある社の社員と電話で仕事の話をし、一段落ついたところで、

 

「では、明日、朝イチで管理事務所のほうへ伺いますので、よろしくお願いいたします」

 

と言って相手は電話を切りました。

 

私は「あれっ、朝イチって、いったい何時に来るんだろう」と思いましたが、後の祭りです。もう一度電話して確かめるのも面倒なので、管理事務所の開く九時に行って待っていればよかろうと自らを納得させました。 

 

それにしても、「朝イチ」とは奇妙な言葉です。『日本俗語大辞典』(東京堂出版)に「あさいち」という見出し語で出ていて、「(「朝一番」の略)朝一番に。」とあります。つまり、「朝イチ」は、俗語なのです。ある国語辞典に「人前で大っぴらに使えないことば」と説明してあります。

むろん、意味は「朝一番に。朝最初になすべきこととして」ということでしょう。

会社の中や、親しく取引している相手に対しては使えますが、面識のない相手、お客様、目上の人などには使えません。

「朝一で伺います」と言うと、皮肉っぽい相手なら「なんだ、他にもやることはあるんだが、それは置いておいて、最初に行ってやるというのか」と曲解して内心不快に思うかもしれません。

やはり改まった相手には、

 

「明日午前九時に管理事務所にお伺いいたしますが、よろしゅうございますか」

 

と時刻をはっきり示して、相手の都合を確認しなければなりません。

 

最近は、節電の関係で、サマータイムやフレックスタイムを採用している会社や団体があります。しかし、双方が採用しているとは限りませんし、採用していても異なる時間設定をしている場合がありますから、訪問・面会は時刻をはっきりしておかないと、相手をまごつかせるばかりでなく、とんでもない行き違いを生ずることになります。自社の中で使っているのが無難でしょうね。

 

 

 

川本 信幹

著書に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。

2011年11月逝去   *この原稿は、2011年に執筆したものです。

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