就活と日本語力
期せずして人事部に異動し,学生から送られて来た膨大なエントリーシートに初めて目を通した日の衝撃を,忘れられずにいる。虎の巻でもあるのか,判で押したように似通った自己PR。書いた本人の魅力がまるで伝わらない空疎な言葉の連なり――。慌てて書店に駆け込んで,就活コーナーに山積みされた大量のマニュアル本を見つけて,また驚いた。少なくとも日本の企業に就職したいなら,日本語力ほど重要なものはない。エントリーシートでも面接でも,自分をPRする媒介として日本語には頼らざるを得ないからだ。
日本語力とは,文才とか文章力とは違う。自分の思いを正確に相手へ伝える技術のことだ。そこには読む人への配慮も含まれる。就活では,仲間うちだけで伝わる言葉や,マニュアルのお仕着せ表現ではなく,自分の言葉で思いを伝えるスキルが求められる。日本語力はまさに,厳しい就職戦線を勝ち抜く武器なのだ。