ホーム > 日本語を楽しむ > レフト鈴木の「お笑い日本語道場」 >(20)「漢字を正しく使い分けよう!(その1)」

レフト鈴木の「お笑い日本語道場」

レフト鈴木の「お笑い日本語道場」
レフト鈴木お笑いトリオ「くりおね」

2016年11月

「漢字を正しく使い分けよう!(その1)」

レフト鈴木

皆さん、お久しぶりです!先日、平成28年度第2回日本語検定が行われましたね。受検された皆さん、お疲れ様でした。もちろん、僕も2度目の1級認定を目指し、受検してきましたよ。今回は勉強に集中するために、この日本語道場を休載までさせていただいたので、合格していてほしいところです。来月の合格発表まで、皆さんと同じくドキドキしながら待ちたいと思います。

ところで話は変わりますが、この前本屋さんに行った時に、店頭の貼り紙に「芥川賞授賞作家最新作あります!」と書いてありました。「授賞」とは文字通り「賞を授ける」という意味なので、「賞を受ける」という意味の「受賞」が正しい表記です。もちろん本屋の店員さんが間違えたのだと思いますが、もしこの表記の通りに受け取ると、亡くなっているはずの芥川龍之介が最新作を出したみたいなことになってしまいますね。本当にそうだとしたら、まさに話題騒然の作品になりそうですが。

このように、同じ読みでも漢字の使い分けを間違えると全く意味が違う言葉になってしまうことがよくあると思います。なので今回はそんな言葉をいくつか、私達の身近にありそうなシチュエーションの分かりやすい例文でご紹介していこうと思います。題して「漢字を正しく使い分けよう!」


・「師事/支持(しじ)」

 男 A「今日はこの駅前に田中候補が選挙演説にやってくるんだろ?」
 男 B「そうなんだよ。実を言うと、僕は田中先生に師事しているんだ」
 男 A「え?そうなの!?」
 男 B「うん。勉強会にもよく参加させてもらうんだけど、とてもいい人だよ。僕も田中先生みたいな政治家を目指すんだ」
 男 A「へ~、意外だな。あ、田中候補が出て来るぞ」
 田中「駅前にお集まりの皆さん、こんにちは。私が知事になった暁には...」
聴衆 A「田中ー!誰がお前なんかに票入れるか!」
聴衆 B「あんたがどれだけ金に汚いかは、よく知ってるんだからね!」
聴衆 C「引っ込めー!」
 男 A「住民にはあまり支持されてないみたいだね」
 男 B「...」

 

『新明解国語辞典(第7版)』には、「師事」は「生涯の師として、その教えを直接に受けること」、「支持」は「その人の意見・行動などに賛成して、後援すること」とあります。それにしても、生涯の師と仰いでいる人がこんな風に罵声を浴びていたら、どんな気分なんでしょうか。もしかしたら一気に熱が冷めて、「師事」することも「支持」することもやめてしまうかもしれませんね。


・「感傷/干渉(かんしょう)」

  父「タカシ、こんなところにいたのか。何、公園で一人で感傷に浸ってるんだよ?」
タカシ「別に。お父さんには関係ないよ」
  父「つれないこと言うなよ。そういえばお母さんに聞いたけど、昨日学校の机にラブレターが入ってたらしいじゃないか。お前もやるなあ。その後その子とはどうなんだよ?デートに誘うならお父さんがアドバイスしてやるぞ」
タカシ「うるさいなあ!あの手紙は入れ間違いだったんだよ!机を一つ間違えたんだってさ!本当は僕の後ろの席の池面太郎(いけ・めんたろう)君に渡すつもりだったんだって。何も知らないくせに勝手なこと言わないでよ!もうお父さんなんて嫌いだ!」
  父「干渉し過ぎてしまったか...」

「感傷」は「なんとなく悲しくなって物思いに耽ったり、心を痛めたりすること」、「干渉」は「他者のことに立ち入って、意見を述べたり指示を与えたりすること」です。友達でも恋人でも家族でも、ちょうどいい距離のとり方というものがあります。あまり相手の心の中に土足で入り込んで「干渉」してしまうと、嫌われてしまうこともあるので気をつけましょう。この親子の場合、むしろお父さんの方がショックで「感傷的」になっているかもしれませんが。


・「歓喜/喚起/換気(かんき)」

佐々木「よく来たな。狭いけど上がってくれよ」
 小林「おじゃましまーす。今時四畳半一間のアパートに住んでるなんて珍しいな。まあ、サッカー日本代表がW杯出場を決める歓喜の瞬間を、三人で共有するには十分な広さだけどな」
佐々木「だろ?あ、一応注意を喚起しておくけど、いくらテンションが上がっても、過度に騒がないでくれよ。下の階の人に迷惑だから。よし、それじゃあ早速酒でも飲もうぜ。つまみは今、高橋が用意してくれてるから」
 小林「お、いいねえ。ん?なんか臭わない?ていうか、くせぇ!おい、高橋、お前何作ってるんだよ?」
 高橋「田舎の母ちゃんが送ってくれた、くさや焼いてるんだよ。あとフランスに留学中の姉ちゃんが送ってくれたブルーチーズと、マレーシアに単身赴任中の父ちゃんが送ってくれたドリアンも冷蔵庫から出しといたぞ」
 小林「なんでこんな狭い部屋にそんな臭い物ばかり持ち込むんだよ!?佐々木!早く換気してくれー!」

「歓喜」は「非常に喜ぶこと」、「喚起」は「意識下にあった物事などを呼び起こすこと」、「換気」は「建物内部の空気を外部の空気と入れ換えること」。読み方は同じですが、三つとも全く意味が違いますね。それにしても、いくら家族から送ってもらったとはいえ、高橋はなぜこの三つをチョイスしたのでしょうか?くさやとブルーチーズはともかく、ドリアンは果たしてお酒に合うんでしょうか?いずれにしても、これだけ強烈な臭いが部屋に充満してしまったら完全に「換気」するのは難しそうですが、それだけに臭いから解放された時の佐々木と小林の「歓喜」はひとしおだと思います。そして高橋には、次から臭いがあまり出ないおつまみを持ってくるように注意を「喚起」する必要がありそうです。



今回のテーマはいかがだったでしょうか?日本語検定には「表記」という分野がありますし、こうやって漢字の使い分け方を僕と一緒にどんどん覚えていきましょう。

そしてこの場を借りて一つお知らせさせてください。来年1月9日(月・祝)に「第3回くりおね単独ライブ」を開催します!詳細は僕のTwitterやブログをチェックしてみてください。「日本語道場」読者の方々のご来場をお待ちしています!

レフト鈴木
1987年埼玉県生まれ。千葉大学卒業。お笑いトリオ「くりおね」ツッコミ担当(ワタナベエンターテインメント所属)。フジテレビ「日本語探Qバラエティクイズ それマジ!?ニッポン」、テレビ朝日「GURIGURIくりぃむ」、チバテレビ「Girl’s Pop’n Party」「おはYo! HIテンション」等に出演。2013年日本語検定1級に認定。
アメブロ:http://ameblo.jp/hidekasuzuki/
ツイッター:@leftsuzuki
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