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レフト鈴木の「お笑い日本語道場」

レフト鈴木の「お笑い日本語道場」
レフト鈴木お笑いトリオ「くりおね」

2016年12月

「漢字を正しく使い分けよう!(その2)」

レフト鈴木

読者の皆さん、今年ももうすぐ終わりですね。この年末、僕達くりおねは、年始に行われる単独ライブに向けて準備を進めたり、事務所ライブに出たり、テレビの収録に呼ばれたりと、ありがたいことにとても忙しくさせていただいています。

ところで、先日は平成28年度第2回日本語検定の合否発表がありましたが、受検された皆さん、結果はどうでしたか?ちなみに僕も二度目の1級認定を目指して受検しましたが...不合格でした!悔しい!先月も書きましたが、今回は検定委員会の方々の御厚意によりコラムを一ヶ月休載させていただき、万全の状態で臨んだつもりでしたが、合格することができませんでした。応援してくださった皆さん、すみませんでした!なかなか表彰状には手が届かないですね~。次こそは合格します!(毎回言っていますが...)

今回の1級の問題の個人的な感想としては、「漢字」の領域が比較的難しかったように思います。僕も得点率をそこで落としてしまいました。その分、「語彙」、「言葉の意味」の領域は高い得点率をとれたと思います。そしていつも悩まされるのが「表記」の領域です。○×問題なので、最後の最後まで迷ってしまいます。やはりそれはまだ正確な知識が身についていないということなのでしょう。ということで、今月も先月に引き続き「同音異義語」の使い分けを身近なシチュエーションの分かりやすい例文で紹介し、一緒に勉強していきたいと思います。題して「漢字を正しく使い分けよう!」



・「以外/意外(いがい)」

 田中「いや~緊張するなあ。何てったってこれから学校一のマドンナ、サトミちゃんに告白するんだもんな。佐藤、わざわざついてきてもらっちゃって悪いな」
 佐藤「いいんだよ。ところでサトミちゃんのどんなところが好きなんだ?」
 田中「そりゃあ、なんといっても清楚で純情可憐なところだよ。言葉遣いも上品だし、なんか奥手そうじゃん?俺そういう子がタイプなんだよ」
 佐藤「なるほどな。まあ横にいてやるから頑張れよ」
 田中「おう。あ、来た!」
サトミ「田中君。話って何?」
 田中「実は俺、サトミちゃんのことが好きなんだ!もう君のこと以外は考えられない!俺と付き合ってください!」
サトミ「うん。いいよ~。でも、私今彼氏5人いるから6番目ってことになるけどいい?あ、ついでに佐藤君とも付き合ってあげてもいいけど、どうする?」
 佐藤「...意外な一面を知ってしまったな」
 田中「...」

『新明解国語辞典(第7版)』には、「以外」は「...を除いてほか」、「意外」は「当面する事態や実際の結果が予想とは全くかけ離れたものであって驚きを感じる様子だ」とあります。ほかに「いがい」と読む言葉には、「なくなった人の体」という意味の「遺骸」等があります。

それにしても、清楚で男性に対して奥手だと思っていた女の子がかなりの肉食だったなんて、田中君の告白は「意外」な結末を迎えてしまいましたね。どうやら彼女「以外」の女の子と付き合った方がよさそうです。



・「観葉/寛容(かんよう)」

 佐々木「お邪魔しまーす。あ、もしかしてこれが例の物か?」
  河合「そうなんだよ。立派な観葉植物だろ?かなり希少な種類だからなかなか見つからなくて。でもどうしても欲しくて、インターネットを使ったりして世界中を捜し回ったんだよ。それでやっと今日手に入れたんだ」
 佐々木「そうなのか。やっぱり生で見ると迫力が違うな」
河合の妻「ただいま~。あら、佐々木さん来てたのね」
 佐々木「お邪魔してます。今日は観葉植物を見に来ました」
河合の妻「観葉植物?ちょっと、何よこれ!?こんなに大きな物勝手に玄関に置いて、邪魔よ!ていうか、これいくらしたの?」
  河合「えっと、100万円くらいだけど...」
河合の妻「はあ!?100万円!?うちのどこにそんな余裕があるのよ!私になんの相談もなく勝手なことして!今すぐ返品しなさい!」
 佐々木「観葉植物よりも先に、寛容な奥さんを捜すべきだったな」

『新明解』には、「観葉」は「葉の色や形を見て楽しむこと」、「寛容」は「失敗などをとがめだてしないで、他のいい面を積極的に認めようとする様子」とあります。ほかに「かんよう」と読む言葉には、「何かをする場合に最もよく心得ておかなければならないこと」という意味の「肝要」等があります。

それにしても、「観葉」植物に100万円も使うなんて、思い切ったことをしましたね。相談なしに100万円の買い物をしても怒らない程、「寛容」な女性はなかなかいないでしょう。もちろん、僕の相方の上田のように、河合の実家が大金持ちであれば話は別ですが。



・「刊行/慣行/敢行(かんこう)」

  社員A「聞いた?また社長が自叙伝を刊行したらしいよ」
  社員B「えっ、また?これでもう10冊目でしょ?じゃあ明日は恒例のマラソン大会をやるのかな?」
  社員A「勘弁してほしいよな。なんで社長が本出す度に42.195㎞走らなくちゃいけないんだよ。意味分かんねーよ。しかも優勝特典が社長の著書だもんな。全くテンション上がらないわ~。雨でも降ってくれればいいのに」
  社員B「朝イチからマラソンなんて、めんどくさいよな。でも、俺たちが入社する前からあるしきたりみたいだし、ここは慣行に従うしかないよ」
 ~翌日~
  社長「みんな、おはよう。それでは恒例のマラソン大会を始めるぞ。昨日のうちにコースの下見をしておいたからな。さあ出発だ!」
  社員A「あれ?社長、外を見てください!雨が降ってきましたよ!しかもかなりの大雨です!」
  社員B「本当だ!そういえば今日は台風が近づいているって天気予報で言ってました。これじゃあマラソンはできませんね」
  社長「何!?そんな訳にいくか!これは先代から続いている、歴史あるしきたりなんだ!何としても走るぞ!いいから出発だ!」
社員一同「やっぱり敢行するのか...」

「刊行」は「書籍等を印刷して世に出すこと(「出版」の類義語)」、「慣行」は「古くからのならわしや、普段の習慣として行われていること」、「敢行」は「悪条件等を押し切って何かを行うこと」です。ほかに「かんこう」と読む言葉には、「列車が各駅に停車しながら進むこと」をいう「緩行」等があります。

それにしても、10回も自叙伝を「刊行」しているなんて、どれだけ波乱万丈な人生を送ってきた社長さんなんでしょうか。そしてその度にマラソン大会を行うなんて、社員からしてみたら正直迷惑な「慣行」ですね。しかもそれを台風の中「敢行」したら、翌日は風邪をひく社員が続出して、「学級閉鎖」ならぬ「会社閉鎖」になりそうです。



今年最後の日本語道場、いかがだったでしょうか?できれば冒頭は1級合格のお知らせで始めたかったところでしたが、僕の力不足でそれは叶いませんでした。次こそは合格します!(また言ってしまいました)

それから、先月お知らせした来年1月9日(月・祝)新宿での僕達くりおねの単独ライブですが、まだお席に余裕がありますので、是非僕のブログやTwitterをチェックしてお越し下さい!

それでは皆さん、よいお年を!

レフト鈴木
1987年埼玉県生まれ。千葉大学卒業。お笑いトリオ「くりおね」ツッコミ担当(ワタナベエンターテインメント所属)。フジテレビ「日本語探Qバラエティクイズ それマジ!?ニッポン」、テレビ朝日「GURIGURIくりぃむ」、チバテレビ「Girl’s Pop’n Party」「おはYo! HIテンション」等に出演。2013年日本語検定1級に認定。
アメブロ:http://ameblo.jp/hidekasuzuki/
ツイッター:@leftsuzuki
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