AI時代だからこそ、「本物の言葉」を届ける力

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一般社団法人ブリリアントスター 代表理事

性格診断アドバイザー資格講座 主宰
コミュニケーション講師
前向きな組織風土改善コンサルタント

岡本 律子

AIが、誰でも簡単に、整った文章を書いてくれる時代になりました。メールも報告書も、SNSのメッセージも、少し条件を伝えれば、相手に配慮した感じのよい文章をつくってくれます。

最近では、マッチングアプリでも、相手のプロフィールをAIに読み込ませ、「この人には、どんなメッセージを送ればいい?」と相談する若者もいるそうです。AIは、相手が喜びそうな、優しく思いやりのある言葉を提案してくれます。メッセージでは「なんて気遣いのできる人だろう」と好印象だったのに、実際に会ってみると、ほとんど会話ができず、がっかりした。そんな話を耳にすることもあります。

これは、これからのコミュニケーションを考えるうえで、とても象徴的なことだと思います。

私は約30年、性格分析とコミュニケーションについて研究し、企業研修や人材育成に携わってきました。現在は一般社団法人ブリリアントスターの代表理事として、企業の離職防止コンサルティングやコミュニケーション研修を行うほか、性格診断アドバイザー資格講座を主宰しています。

私自身、研修ではAIを積極的に活用することをお伝えしています。特に若年者に対して、AIを上手に使い、社内文章や上司への報告、いわゆる「報連相」を解りやすく、正確に伝える力を育てることを企業から求められています。

例えば新人研修では、受講者が書いた報連相の文章をブラッシュアップするためのプロンプトをつくり、AIに添削してもらう方法を伝えています。

そこで私が大切にしているのは、AIに上手に文章を書いてもらう力を育てることではありません。AIに自分の文章を修正してもらうことで、その人自身の「文章を書く力」を高めていくことです。

まず、自分の頭で考えて文章を書く。その文章をAIに読み込ませ、「伝えるために何が足りないのか」「どこが分かりにくいのか」「どのように直せば、より正確で伝わりやすい日本語になるのか」を指摘してもらいます。そして、自分が書いた文章と添削された文章を比べます。

「ここは主語が抜けていたんだ」「この情報がないから、相手には判断できなかったんだ」「この表現のほうが、誤解なく伝わるんだ」と、自分の文章の癖や不足している部分に気づき、次に自分で書くときに活かしていくことが出来るようになります。

私は、AIを使うことで文章を書く力を手放すのではなく、AIを添削者やトレーナーとして活用し、自分自身の日本語力や文章力を高めていくことが大切だと考えています。

今、「伝える力」は大きく二つに分かれてきているように感じます。

一つは、メールやSNSなど、AIの力も借りながら文章で伝える力。もう一つは、目の前の人に、自分の頭で考え、自分の言葉で伝えるリアルなコミュニケーション力です。

この二つの差が広がりすぎると、SNSやメールではとても感じのよい人なのに、実際に会うと相手の気持ちを汲めない、言葉が出てこない、ということが起こります。そして、このような「話す実力」が身についていない、つまり「中身は空っぽ」の人が増えているのも事実です。

だからこそ、AIに頼って考えることを手放すのではなく、AIから学びながら、自分自身の言葉を育てていくことが大切です。

AIが出した文章が本当に正しいのか。自分が伝えたいことと合っているのか。相手にふさわしい言葉なのか。最後に判断するのは人間です。

AIが出す言葉が、いつも正しいとは限りません。だからこそ、正しい日本語を知り、言葉の意味やニュアンスを理解し、「この表現で本当にいいのか」と自分自身で判断し、選択できる力は、これからますます必要になると、新人研修を行いながら実感しています。

そして私は、AI時代に必要なコミュニケーション力は、さらにその先にあると思っています。

一つ目は、相手をよく見る「観察力」。二つ目は、日頃から会話を重ね、その人を知っていく「関わり力」。三つ目は、たくさんの言葉の中から、その人に今届けたい言葉を決める「選択力」。そして四つ目が、二人の間に起きた出来事を言葉にする「物語を紡ぐ力」です。

例えば、「あなたは優しいね」と言うだけなら、AIでも書くことができます。

しかし、「私が風邪で休んだとき、頼んでもいないのに仕事をここまで整理しておいてくれたよね。あのとき、本当に優しい人だと思った」と伝える言葉には、二人の間に実際にあった物語があります。

相手を見ていなければ、その出来事には気づけません。関わっていなければ、その人らしさは分かりません。言葉を知らなければ、ぴったりの表現を選ぶこともできません。そして、自分の心が動いていなければ、その言葉は「相手の心に届く本物の言葉」にはならないのだと思います。

これから必要になるのは、単なる「言葉の生産力」ではなく、「言葉をプロデュースする力」です。

誰に、何を、どんな言葉で、どんな物語とともに届けるのか。相手を観察し、関わり、その人の心を汲み、数ある言葉の中から選び、自分の心を込めて届ける。

そこに、人間だからこそできるコミュニケーションの価値があるのだと思います。

だからこそ、AI時代の今、日本語を学ぶ意味は、むしろ大きくなっています。

正しい言葉を知ること。語彙を増やすこと。似ている言葉のニュアンスの違いを知ること。それは、単に「間違えない日本語」を身につけるためではありません。

人をより深く理解し、その人にふさわしい言葉を選び、自分の思いを正確に届けるための「選択肢」を増やしていくことでもあります。

言葉は、人に届けるものです。人に影響を与え、人を励まし、人を幸せにするものです。

だから私は、「言葉を磨くことは、心を磨くこと」だと思っています。

AIがどれほど進化しても、最後に言葉を選び、その言葉に心を込め、誰かに届けるのは人間です。そして、今の時代だからこそ、わたしたちに必要な力だと思います。

日本語検定を通して、よりお互いの人生がしあわせになる「言葉」が届けられたら世界はもっと優しくなっていくと思います。

岡本 律子(おかもと りつこ)

一般社団法人ブリリアントスター代表理事
性格診断アドバイザー資格講座 主宰
コミュニケーション講師
前向きな組織風土改善コンサルタント

2002年、リクルート北海道在職中に心理カウンセラーの認定を受け独立。性格分析研究30年目、研修講師歴22年。
これまで延べ10,000人以上の面談を通して、性格と会話、ストレス、人間関係の傾向を研究し、独自の「岡本式エゴグラム性格診断 なないろグラム」を確立。
現在は、企業研修や離職防止コンサルティング、カウンセリングのほか、「性格診断アドバイザー資格講座」を主宰。500社を超える企業支援の経験をもとに、人間関係やコミュニケーション改善を、わかりやすく実践的に伝えています。
「輝いて生きる人を増やし、人と人が相互に元気を与え合う社会をつくること」を使命に活動中。

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