近年、日本人の使う日本語は貧困化し、規範性を失いつつあります。その原因は、学校教育において言語そのものについての教育が軽視されてきたことと、情報機器の発達に伴って言語が個人化していったことにあると思われます。
状況に応じた適切な敬語が使えない、大学生の語彙が貧困で授業が成立しないなど、日本人の言語能力が著しく低下していることは否めない現実です。また、「ら」抜き言葉の横行に代表されるように、日本語の規範性が揺らいでいます。
本来、規範的な日本語を使うべきであるマスメディアにおいてさえ、不適切な言葉遣いが見聞されるような状況に至っており、日本の各層で日本語が危機に瀕していると言っても決して過言ではありません。
こうした言語能力の低下や言葉の乱れは、社会全般に見られるさまざまな問題と大きくかかわっています。児童・生徒・学生の学力低下の原因は、紛れもなく言語能力の低下が根本にあります。また、言語能力の低下はコミュニケーション、人間関係に大きく影響することは明らかであり、家庭・学校・企業における不和やいじめ、生産性の低下といった問題を引き起こしています。言葉の問題は社会の安寧にまで及びます。
こうした状況に鑑み、私たちは日本語の運用能力の低下や乱れが引き起こすさまざまな問題の解消、軽減を意図し「特定非営利活動法人日本語検定委員会」を設立し、日本語を使う多くの人々に対して、日本語の運用能力の向上に資するため、日本語検定の実施・運営、研修・講演会等の開催、出版物の発行等を行い、日本文化の発展と社会教育の推進に貢献したいと考えています。
こうした活動を実施する上で、資産の保有や各種の契約締結の際に支障が出ることも予想されるため、法人化は急務の課題ですが、この会は営利を目的としていないので、いわゆる会社法人は似つかわしくありません。
また、市民や行政との協働を進めるため、ガバナンスの強化や市民への説明責任を重視し、開かれた団体として情報公開を徹底する方針であり、そのような公益的な観点からも、数ある法人格のなかでも最もふさわしいのは、特定非営利活動法人であると考えます。