言葉の橋をかけて

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VTuber

家長 むぎ


 この度、令和8年度第1回日本語検定1級の時事通信社賞優秀賞を受賞しました、にじさんじ所属のVTuber 家長むぎと申します。バーチャルYouTuberとして配信活動のほか、エッセイの連載など執筆活動もしています。

 私が日本語検定を受検したきっかけは、自分らしいVTuberとしての活動を模索する中で、得意としている文章や言葉にまつわる力をさらに鍛えようと思ったからです。表現者としてより豊かな語彙を身に付けること、また発信者として責任を持ち、できるだけ人を傷つけない言葉遣いを学ぶことなどが必要だと考えていました。

 受検にあたっての勉強方法については、まず最初に過去問に挑戦し、ゴールである1級への合格に向けてどんな努力がどれくらい必要なのかを確認しました。その後、公式テキスト・例題集の上級、他にはことわざ辞典を活用して勉強を進めました。特に敬語については公式テキストを隅から隅まで読むのが効果的でした。

 私は配信活動の一環で、視聴者のみんなと勉強をする「Study with me」配信を続けていて、日本語検定も「Study with me」配信の中で取り組みました。配信の内容は、チャットで各々の目標を共有して、30分間の勉強と5分間の休憩を繰り返すというものです。その中で「日本語検定の1級に1回で合格する」と宣言したことで、試験日まで頑張り続けることができました。結果にあぐらをかかず、これからも真摯に日本語を学び続けます。

 最後になりますが、バーチャルYouTuberという新しい存在に対して柔軟にご対応くださり、受賞だけでなくこのような機会を下さった日本語検定委員会のみなさまに感謝申し上げます。これから先、バーチャルな存在が教育や生涯学習の領域においてますます活躍の場を広げられることを心より祈念すると共に、その発展に貢献できるよう尽力してまいります。


「言葉の橋をかけて」
 言葉というのは記号であり、あなたの気持ちを完璧に表すものではありませんが、言葉はあなたの気持ちを伝えるために欠かせないものです。言葉を重ねることで少しずつ、自分でもつかみきれなかった気持ちの解像度が高くなることもあるでしょう。逆に、自分の気持ちとは遠いものになってしまうこともあるけれど、それは言葉が記号に過ぎないからなのだと思っています。

 忘れがちなことではありますが、私たちは、窓、空、鳥、といくつもの言葉を覚えてきました。ごく自然なことであっても、学んで身につけたのです。クレヨンをにぎって色の名前を覚えたり、擦りむいたひざに「痛いの痛いの飛んでいけ」とおまじないをかけてもらって「痛い」を覚えたり。これからも日々が続いていく中で、あなた自身で手をのばし、言葉を、日本語を知ってほしいと願います。

 変わりゆく世界の中で、言葉はあなたをあなたたらしめるものです。言葉に手を伸ばせば見えてくる新しい景色があります。外国語を学び、あなたが既に知っている言葉を別のすがたへと変えることも大切です。それでもやはり、まだ知らない日本語を知ることは、自分の可能性を養う方法の一つとして大切です。自分の気持ちを表現するときにもどかしさを感じたことのある人には、ぜひ日本語の勉強をはじめてみてほしいです。

 学べば学ぶほどたくさんの言葉があることに驚く毎日です。今の自分の気持ちにぴったりな言葉が見つかると、私と同じ気持ちを抱いた人が、この言葉の生まれたずっと昔にもいたのだろうと嬉しくなります。嬉しいに限らず、心強いと感じるときもあれば、悔しいと感じるときもある。それは言葉が私たちとは切り離せない存在だからでしょう。

 言葉は橋のようなものです。言葉は橋となり、あなたを新しいところまで進めるようにしてくれます。そしてその橋は、あなた以外のものが、あなたの元へやってくる架け橋でもあるのです。それは「理解する」ことに近いかもしれません。

 あなたには、言葉の橋をかけてほしい。その過程であなたは言葉が息づくさまを見つけたり、言葉が表す実物をたしかめたりするために外へ出るでしょう。本から顔を上げ、感覚を研ぎ澄ませて、言葉のことを考える日があなたの元に来たらいいなと思います。まだ幼かったあの日、そうしたように。

家長 むぎ(いえなが むぎ)

VTuber

22歳の大学1年生。 食べることが大好きだが、料理が壊滅的に下手。 美術館巡りや読書も好きで、小説を書いたりと多趣味。 目が悪くゴミ袋と猫をよく見間違える。友達をつくりたくて配信を始めた。