日本語の総合的な能力を測る「日本語検定」(略称・語検、文部科学省後援事業)の2021(令和3)年度第1回(通算第29回)の試験が、6月11、12日に行われました。国内は47都道府県79カ所の一般会場と、学校や会社の施設を利用した319カ所の準会場で実施。米国グアムでも行われました。国内外を合わせた受検者は19,198人で、最年少は兵庫県西宮市の小学1年生の女子児童、最年長は大阪市の90歳の女性でした。

 「語検」は「敬語」「文法」「語彙(ごい)」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6つの領域にわたり、日本語を正しく使えるかどうかを測るものです。難易度に応じて1級から7級に分かれており、幅広い年齢層がそれぞれの級の認定の取得に挑戦できます。検定結果は受検者に郵送で通知するほか、公式ホームページにも掲載しています。

東京会場では669人が受検

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 東京23区の一般会場は大正大学で、延べ669人が受検しました。同大学のある豊島区の12日正午の気温は27度、雲が多めでしたが晴れ間も広がるまずまずの天気で、キャンパス内のベンチでは、問題集を広げて最後のチェックをする受検者の姿が見られました。新型コロナウイルス感染症に対応し、検定会場では、各階の入り口に除菌スプレーを用意。受検者の座席の間隔を空けたほか、午前と午後の試験の間には教室内の除菌を徹底しました。各室の監督者もマスクとフェイスシールドを装着するなど万全の感染対策が講じられました。

「授業では気づかない弱点も」

 杉並区からやってきたという小学校5年生の女子児童とお母さんが終了後にキャンパス内のベンチで一休みしていました。受けるのは今回が初めてで、6級を受検。去年は漢検を受けましたが、読売KODOMO新聞に載っている記事を読んで、今年は「語検」を受けたいと思ったそうです。女の子は「緊張したけど、できた自信はあります。漢検よりいろいろな内容があると思いました」とのこと。今まで「語検」のことは知らなかったというお母さんは「学校の教科書をやっているだけではなかなか気がつかないこと、例えば『ら抜き言葉』が弱いといったことが分かりました。『語検』は幅広い内容を学べるところがいいと思います」と話してくれました。

「日本語の使い方に興味」

 足立区在住で初めての受検で4級を受けているという中学2年生の女子生徒のお母さんが試験時間中に娘さんを待っていました。娘さんは、読売KODOMO新聞に載っていた「語検」の「キャラクター(にほごん)がかわいい」と言って目を留め、「日本語の使い方に興味があるので受けてみたい」と申し込んだそうです。問題集などに取り組んで準備したということで、お母さんは「本人が自分でやる気になるのはうれしいですね」と話していました。

「ライター系の仕事に就きたくて」

調布市在住で、初めての受検で2級を受けたという26歳の女性に話を聞きました。現在はIT事務の仕事をしていますが、ライター系の仕事をしたいという希望があり、その準備の一環だそうです。過去問やテキストで勉強したというこの女性、「日常生活では使わない語彙も出てくるので、自分の語彙力を確認するいい機会になりました」と話してくれました。

「中学受験控え、語彙力を」

 北区在住で、小学4年生の娘が6級を受けているというお母さんが会場近くのベンチで待っていました。娘さんは、これまでにも漢検、英検を受けていましたが、読売KODOMO新聞に載っていた記事を読んで本人が受けてみたいと希望したそうです。お母さんは「中学受験のために進学塾に通っています。検定で語彙力などを身に付けてほしいですね。また、上の級も受けると思います」と話していました。

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「日本語を丁寧に使いたくなる」

 2級を受けた会社員の女性は、コロナ禍で家にいる時間が多くなり、何か勉強しようと思ったのがきっかけだそうです。外国語の検定も考えましたが「自分は日本語がちゃんと使えているか。分かっていないことが多いんじゃないか」と思って「語検」にしたとのこと。準備はこの2週間に集中して過去問と参考書に取り組んだそうです。「手応えは、微妙……かな」と言いつつも、「受検したことで、日本語を丁寧に使いたい、使えるようになりたいと思うようになりました。素敵な試験だと思います」と話してくれました。

「根拠まで遡り理解」

 午前中に2級を受け、午後に1級を受けるという高校3年の女子生徒に、午前が終わった時点で話を聞くことができました。2級の内容も難しかったというこの生徒は「『語検』の準備の勉強をしてみて、今まで意識していなかったけれど、なぜそういう答えになるのか、その根拠まで遡って理解することができました。敬語の使い方も、テレビや日常のおしゃべりでも気になるようになりました」ということです。

「準備の勉強で多くの発見」

 初めての受検で2級を受けたという女性は、「語検」のことは1カ月前ぐらいに知り、準備を始めたのもそれからだそうです。「語検」を選んだ理由は「社会人として敬語もきちんと使えるようになれたらと思い、『語検』にしました」ということです。「勉強をするようになって、今まで知らなかった言葉の意味や使い方が分かり、発見が多いです。SNSで『知恵熱』を『熱狂している』という意味で使っている例を見るけど、そうではないんだ、とか、『なしくずし』も間違って使っていたのだなとか。仕事のメールでも、相手が社内か社外かで、社内でも相手によって違うなど、以前より気にするようになりました」と、自身の変化を実感していたようです。

(時事通信社編集局 伊豆倉 哲・大澤 克好)