「お悲しみに寄り添う」術を、言葉で正確に伝えていきたい

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めもりあるグループホールディングス株式会社

人事部人材開発グループ

鈴木 更

北海道苫小牧市に本社を置き、北海道胆振地方に葬儀式場、仏壇店、生花店を展開している「めもりあるグループホールディングス株式会社(昭和9年創業)」の社員の皆様が日本語検定を団体で受検されました。受検に至る経緯などについて、人事部人材開発グループの鈴木更様に伺いました。

ご遺族に寄り添う仕事

 私たちは、「愛する人とのお別れ」という何よりも辛く悲しい出来事を前にされた方々をお客様としてお迎えします。そのお悲しみに寄り添い、和らげるお手伝いをすることが、私たちの仕事です。

 葬送に携わる者として、身につけるべき知識は山ほどあります。しかし、知識がお客様のお悲しみを癒すわけではありません。伝える力、聴く力、想像する力、想いを汲み取る力、提案する力、状況を把握し的確に場を動かす力…。分解しきれないほどたくさんの能力をお客様の心地よいところで発揮できて初めて、安心してお別れに臨んでいただくことができると考えています。

 明確に言語化できない、しかし確かにお悲しみを和らげてきたその能力は、これまで従業員の感性のみによって受け継がれてきました。まるで寡黙な職人から伝統の技を受け継ぐ弟子のように、「感覚でわかる」まで体得できない…恥ずかしながら当社では、数年前までそのような綱渡りの状態が続いていました。

 綱渡り状態を脱し、人材育成や能力開発を制度として整えようと動き出したのは、従業員数が100名を超え、毎年一定数の新入社員を迎えられるようになった頃です。今後の事業拡大を見据えると、従業員それぞれの感性に委ねられていた「お悲しみに寄り添う」術を、会社が再現性の高い形で保有しておくことは不可欠だと考えてのことでした。

 求められる能力のすべてに通ずるのが「日本語力」です。お客様と顔を合わせてのコミュニケーションはもちろん、電話応対やメールでのご案内、お取引先企業様とのFaxのやりとりから、社内の事務連絡まで、どんな場面にも“言葉”がついて回ります。救いにも凶器にもなる、言葉。信頼を構築するのも、関係を壊すのも言葉です。大切な方を亡くされた直後の不安定で敏感な心に近づく私たちは、どんな場面でも、扱う言葉一つひとつに意識的でなければならないと感じます。

日本語検定の意義

日本語検定の受検希望を募ると、入社2年目の若手社員から入社24年目のベテラン社員まで、事業部門や職種を超えて多くの社員が手を挙げてくれました。「日本語力を磨きたい」と思いながらも、母国語をあらためて勉強する機会はそう多くはありません。受検勉強を機に、無意識に使っていた言葉一つひとつに意識を向けられるようになったことは、検定合格以上に価値のあることでした。このことが、まっすぐに気持ちをやりとりする助けになってくれると信じています。

 どんなによい考えも、上手に伝わらなければ意味を持ちません。今私たちが、そして皆さまが抱えている課題も、もしかしたら「日本語力」が解決してくれるかもしれません。単なる日本語力に収まらない「仕事力」向上のきっかけとして、多くの方が日本語検定を知ってくださることを願っています。

鈴木 更(すずき さら)

大学卒業後、新卒で入社。葬祭ディレクターとして3年ほど勤務したのち、人事部人材開発グループに異動。人材育成、採用活動を担当。

めもりあるグループホールディングス株式会社 会社概要

昭和9年創業。北海道苫小牧市に本社を置き、北海道胆振地方に葬儀式場、仏壇店、生花店を展開。「お悲しみに寄り添うことで社会に貢献する」。時代とともに葬送の形が変わっても、その想いは変わりません。全国に先駆けて建設した家族葬専用ホールも、一軒家を貸しきる安置専用施設も、葬儀式場に導入したプロジェクションマッピングも、すべては「お悲しみに寄り添う」ため。これからも変わらぬ想いで、伝統と変革の道を歩んでまいります。