日本語の総合的な能力を測る「日本語検定」(略称・語検、文部科学省後援事業)の令和3(2021)年度第2回(通算第30回)の試験が、11月12、13日に行われました。国内は47都道府県84カ所の一般会場と、学校や会社の施設を利用した433カ所の準会場、海外は米国(ニューヨーク、グアム)、ドイツ(ミュンヘン)、アイルランド(ダブリン)の3カ国で実施され、国内外で計23,058人が受検しました。新型コロナウイルス感染状況が落ち着きを見せる中、受検者数は春の第1回を上回り、最年長は神奈川県相模原市の88歳男性、最年少は東京都と兵庫県宝塚市の5歳女児でした。

 「語検」は「敬語」「文法」「語彙(ごい)」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6つの領域にわたり、日本語を正しく使えるかどうかを測るものです。難易度に応じて1級から7級に分かれており、幅広い年齢層がそれぞれの級の認定の取得に挑戦できます。検定結果は12月上旬に受検者に郵送で通知するほか、公式ホームページにも速報を掲載します。

東京会場では630人が受検

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 東京の一般会場は上智大学四谷キャンパス(千代田区紀尾井町)で、日中は小春日和の好天に恵まれる中、午前(2、4、6級)と午後(1、3、5、7級)に分けて検定が行われ、計630人が受検しました。新型コロナの感染再拡大を警戒し、キャンパスおよび各会場出入り口での除菌スプレー設置や、マスク着用の徹底など引き続き万全の対策が講じられました。

「国語が好き」

 北区からお母さんに付き添われて受検にきた小学校6年生の女子児童は、前回の7級合格に続いて6級への挑戦で、「うまくできた」と手応えに自信ある様子でした。お父さんはインド人ですが、「国語(日本語)の勉強が好き」で、読売KODOMO新聞で語検を知り、力試しに受検したのがきっかけだそうです。学校の先生には英検受検も勧められているということで、「医者になりたい」という将来の夢に向け、これからも語検が勉強のパートナーになりそうです。

「職場の勧めで」

 港区から受検に来た44歳の公務員男性は前回3級に合格し、今回は2級を受けました。「語検は職場で推奨されているので。しかし、3級に比べ2級がこんなに難しいとは・・・」と苦笑い。メールや文書でさまざまな日本語表現を扱う職場だけに、二重敬語の誤りなどには敏感になっていたそうですが、実際に試験問題で遭遇すると判断に迷い、「時間が足りなかった」。漢字も予想外に難しく、「これからの課題です」と会場を後にしました。

「言葉の行き違いを防ぎたい」

 初受検で2級を受けた建設コンサルタントの24歳男性は、コロナ禍で顧客とのやりとりでメールや文書の比重が増えたのが受検のきっかけでした。「言いたいことや考え方がお互いに正確に伝わっているか、言い回しや表現を精査するのに時間を取られることが増えてしまい、この際、正しい日本語をしっかり勉強するしかない」と思い立ったのが理由。「東京書籍の参考書や問題集で3カ月勉強した」とのこと。結果には「自信がない」そうですが、「出題に偏りがなくバランスが取れていて、子どもでも受検しやすい。これだけたくさんの人が受けているのも心強い」と日本語探求に意欲満々の様子でした。

「手話と日本語でバイリンガルに」

 品川区から6級初挑戦に来た小学6年生の女子児童は、お母さんがろうあで、幼いときから家庭では手話がほとんどでした。試験待ちのお母さんに話を聞くと、「娘は第一言語が手話。普通に話せるけど、日本語をきちんと使えるようになってほしい」という願いで語検にチャレンジしたということです。娘さんも意欲的で、将来は耳の不自由な子どもたちに国語を教える先生になるのが夢だとか。「手話と日本語でバイリンガルを目指しています」をお母さんがほほ笑んでいました。

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「壁を乗り越えたい」

 杉並区から来た出版社勤務の40代女性は1級に3回目のチャレンジ。初挑戦では合格まで「あと数点」と惜しい成績で、これに気をよくして受けた2回目は「何じゃこりゃ」という出来で打ちのめされたとか。「本当にこの壁を乗り越えられるのか」と思い悩みながらの再々挑戦ですが、受検で求められる集中力や緊張は「健康によい」と前向きです。漢字対策で読書の幅も広がったそうです。

「敬語が使えると格好いい」

 品川区からきた大学3年の女性は2級を受けました。大学で語検が単位に認定されるため2年前の3級合格以来の受検。専攻は日本文学研究で、就職は出版社志望とか。それだけに文章一般には自信はあるものの、敬語の使い方は迷うことが多く、「適切な日本語、正しい敬語が使える人は格好いい」と常々考えていたそうです。試験の手応えもまあまあの様子でしたが、「敬語だけでなく、語彙の少なさとか弱点も自覚した」と振り返っていました。

「勉強しがいのある検定」

 3級を受けた20代の会社員女性は「日本語って意外と難しい」と感じたのがきっかけ。仕事で扱うメールや文書で「こんな言い方したっけ?」「この敬語合ってるの?」と疑問に思うことが多くなり、参考書やテキストで勉強する過程で「語検」に出会いました。勉強して改めて感じたのは日本語の難しさ。「日常、使いやすく使える言葉遣いばかりしていると、普段目にしないというだけで分からない文章や言葉が増えていく」と戒めるようになり、「語検」について「勉強しがいのある検定」と語っていました。

(時事通信社編集局 大澤 克好)