言葉遣いは人の品格をもあらわす
-正しい日本語とともに、美しく心に響く日本語も忘れずに-

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一般社団法人クールスタイルジャパン

代表

水野 れい子

着物って民族衣装なんだ…

 渡米していた際に、様々な国の友人たちは事あるごとに自国について誇らしげに話していました。

 ある日、何一つ日本のことを伝えることができず、小さくなっていた私に、「でも、民族衣装は自分で着られるのでしょ?」と、まるで慰めるかのように声をかけてくれたのですが、これが、さらに私の心を乱すことになりました。

 お恥ずかしい話、その当時の私は「着物=民族衣装」という認識すらない、日本人でありながら、海外の友人たちより日本の知識も日本へのリスペクトもない本物のおバカさんでした。

 とはいえ、この経験はヨーロッパかぶれだった私のそれからの道を大きく変えてくれました。

 プロトコールマナーから日本古来より伝わる礼法へ、アフタヌーンティーから茶道へ、オペラから歌舞伎・文楽へ。そしてなんといっても、英語よりまずは日本語を学ばねば!と強く感じたのです。

「日本の文化は素晴らしい!KABUKIは?NOHは?」

 伝えたくても、頭には浮かんでもそれらを表現する語彙を持たないのです。英語ができるできない以前に、日本語を知らないため日本語ですら説明できないのです。語彙がなければ変換することすらできないのです。

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言葉遣いはその人の品格をもあらわす

 仕事柄多くの方々と接する機会をいただく中で、素敵だなぁと思う方はいずれも豊かな表情と美しい日本語でお話しなさいます。

 「言葉遣いはその人の品格をもあらわす」といわれますが、年を重ね、一層その言葉の重みを感じています。

時代の進化とこの数年の出来事で、直接人と会わずにコミュニケーションを取ることが多くなりました。

 5年ほど前から、新入社員の日本語力の差や薄さを肌で感じていましたが、オンラインでのやり取りが増えることで、それが新人だけではないことも浮き彫りとなってしまいました。

 家庭の中で両親の言葉遣いが子どもたちの言語形態を決めるのと同じで、新入社員にとって最初の指導者や同じ部署で仕事をする上司・先輩の言葉遣いは、振る舞いや身だしなみ同様に、とても大きな影響を与えます。

 日本で暮らす私たちにとって日本語を知らずして言葉遣いを磨くことは難しく、それはコミュニケーションや報連相(報告・連絡・相談)、メールや書類の作成にまで関わってきます。大手企業の人材育成に携わってきましたが、痛感しています。


私は日本語の豊かな表現がとても好きです

 蕾が「ふっくらと」してきた・雪がシンシンと降る・桜が「舞う」などの表現は、何ともふくよかでその情景が目に浮かびます。「あぁ、そんな季節になったのね」と心で感じる。それが日本語の美しさでもあります。

 美しい日本語や大和言葉は、現代の日本人に希薄になってしまっている「情緒」を取り戻すためにも、心の潤いにもなるはずです。今こそ、老いも若きも改めて日本語を考え、学ぶときなのではないかと思うのです。

 日本語検定が大切にしている「語彙」はもちろんのこと、「言葉の意味」や「敬語」こそ、重要な日本語力の基礎となるのですから。

 年齢層によって様々なメリットを提示してくれている日本語検定では、今の自分がどこまで身に着けているのかをしっかりと把握することができます。

 子どもたちの言葉の乱れや語彙力の低下を食い止めるのは私たちの役割であり、社会に出たときに困らない表現力や伝達力を身につけた「人財」は、学校だけではなく、家庭の日常会話から育まれるものです。

 親が美しい言葉を紡ぐことで、正しく品位ある日本語が身につくと共に、日本の素晴らしさや奥深さを知る機会となることでしょう。

 私たちの日本が諸外国から取り残されないためにもしっかりとアイデンティティを持ち、心豊かで精神性の高い日本でありたいと、強く強く望むのです。

 正しい日本語とともに、美しく心に響く日本語も忘れずにそばに置いておきたいものです。

水野 れい子(みずの れいこ)

一般社団法人クールスタイルジャパン 代表

http://cool-style-japan.com/
短大卒業後、コンパニオンとして広報・VIP対応を担当。同時に多くの企業PRも担当するとともに、フリーアナウンサーとしてTV・ラジオで経験を積み、音楽・芸能・グルメ・スポーツなど、各界のトップリーダーのリポート・インタビュアーとして数々の現場で活躍。高い評価を得る。
世界20か国余りを旅した経験と知識とを生かし、大手企業の人材育成で心の大切さ、豊かさを伝えるとともに、印象的な表情や美しい話し方など、内面・外見のブラッシュアップで年間数百人のイメージアップに携わる。礼法・茶華道教授でもある。
また、失われつつある日本の精神、伝統文化の継承にも励む「伝承プロデューサー」として、心を育む美しい言葉遣い・所作や心をつかむおもてなしをテーマにした内面・外見のブラッシュアップは、企業のみならず個人レッスンにも行い、個人の幸福感・達成感の喜びや充実感へと広げている。美しい言葉は家庭からと「キッズお作法」や「歳時記講座」も開催している。