親子で日本語検定1級に合格!
〜高校生で文部科学大臣賞&お母様が読売新聞社優秀賞を受賞〜

受賞歴

親 笹長あおいさん

2022年第1回 読売新聞社優秀賞、2022年第2回 読売新聞社優秀賞および日本語検定委員会賞受賞。

子 笹長祐里さん

2022年第1回 時事通信社賞最優秀賞、2022年第2回 文部科学大臣賞および日本語検定委員会賞受賞。

高校生が1級に合格して文部科学大臣賞を受賞したのは初めてのことです。また、お母様も1級を受検し合格されました。大変素晴らしいことですが、ご一緒に受検した理由を教えていただけますか。

(祐里さん) 実は私、日本漢字能力検定の1級に合格しておりまして、1級に合格してからも繰り返し受検するリピーターとの、横の繋がりがあるんです。SNS上でのやりとりが多いのですが、その中で日本語検定もリピート受検されている方が数名いらして、その方々に触発されて受検を決めました。
 2022年第1回の日本語検定受検後、同じ会場で受けた方々との採点会に初めて参加させていただいたのですが、そのとき集まったのが70代、30代、20代と10代(私)の4人で、皆さん漢検や日本語検定でも賞を取られているトップレベルの実力者ばかりでした。その会がとても楽しかったので、第2回も続けて受検しました。
 私は小学2年生の時に漢検9級を受検してから1級までずっと受けてきたので、その勉強の積み重ねが日本語検定受検のアドバンテージになっているのでは、と思います。

(あおいさん) ただ、まだ若いということもあって敬語のジャンルには苦労していました。彼の年齢では日常生活で使う機会があまりなく、敬語の実経験が積めていないので。

お母様が受検されたきっかけは何でしたか。

(あおいさん) 私も息子も書店が好きで、よく一緒に行くのですが、漢字検定と日本語検定のテキストはたいてい近くにならんでいるので、以前から検定のことは知っていました。
 息子が問題を解きながら「これは、どれだと思う?」などと、よく私に聞くんです。そうこうしているうちに「なんか、いけるかな?」と思えてきまして。息子から「受けろ、受けろ」と受検を勧められていたこともあって、軽い気持ちで申し込んだんです。でも、受けるからにはやっぱり合格したいじゃないですか。ですから、そこから頑張りました。過去問を解いたり、テキストを読んだり、いろいろ準備して。
 以前、資料作り(カタログなどの編集)を仕事としていたこともあって、表記のゆれや言葉遣いが気になるタイプではあるのですが、日本語検定1級には見慣れない漢字や語彙があり、すごく難しかったです。
 漢字を覚えるのに最初は普通のノートに書いて覚えようとしたのですが、字の細かいところが見えにくく、自分でもわからなくなってしまって。大きく書かないとダメだと思いました。
 それで久しぶりにジャポニカ学習帳を用意して大きい字で書いたら、これが良かったんです。使って気がついた学習帳の良いところは、読み仮名が一緒に書けるようになっていることです。そして、マス目が大きいので、とにかく見やすい。難しい漢字ほど細かいところの線が一本欠けたりしがちなので。
 学校の宿題で10個ずつ書かされたりするのは苦行でしたが、自分が覚えたい字だけ気が済むまで書いて、いつやめてもいい、というのは飽きっぽい私に合っていたのだと思います。ついでに言うと、消えるボールペンで書いたので、手が汚れず、消しゴムのカスも出ず、好きな色を選んだら気分も上がって、書くのがどんどん楽しくなりました。
 あとは、漢字の先生(息子)がそばにいるので、意味や使い分け、故事ことわざなど、聞けば大概何でもすぐに教えてくれて、とても助かりました。
 漢字以外の勉強方法としては、いきなり過去問を解いても頭に入ってこないと感じたので、改めて基礎から取り組むことにしました。具体的には、『日本語上級』(日本語検定公式のテキスト)を頭から通読しました。
 あとは、この検定では敬語のウェイトが大きいと思ったので、敬語をまとめて学びましたね。過去問に取り組んだのはその後です。それから、知らなかった言葉や表現を補うために、図書館で敬語や手紙の書き方、ビジネスマナーなどの本を借りて読んだりもしました。過去問だけ解いていてもダメで、視野を広げることが求められているのかなと思います。

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日本語検定を受検した感想を教えていただけますか。

(あおいさん) 試験を受けるのは本当に久しぶりのことだったので、一回目は少し緊張しました。とりあえず合格が目標で、まさか賞をいただけるとは思っていなかったので、とてもうれしかったですし、自信にもなりました。
 「普段、喋っているから」とか「よく聞くフレーズだから」ではなく、理由が分かった上で、言葉を選択できるようになりたいですよね。解答解説をいただけるので、出題側の意図がクリアになるのがとても良かったです。

(祐里さん) Web上での合否発表と同時に解答解説を出されているのは、日本語検定の大きな特徴ですよね。正しい答えがどれかということだけでなく、他の選択肢がどうして不正解なのかを解説してくれている。正解不正解だけでなく、自分がどうして間違ったのかを知ることで、次に活きてくると思うんです。

祐里さんが日本語に興味を持ったのはいつ頃からですか。

(祐里さん) 小学1年生の終わりからです。日本語にハマったきっかけの一つに、小学1年生のころの担任の先生から勧められて手に入れた漢字辞典の存在があります。この辞書の巻末には1年生から6年生で習う漢字が一覧になっていて、それを見ながら2年生までに小学生で習う漢字はすべて覚えて、そこからブラッシュアップしていきました。
 「好き」を究めていくと、学習テキストでは飽き足らず、辞書を読むようになるんですよね。やっぱり辞書でないとなかなか出会えない言葉があって。知らないものを見つけるとウキウキするんです。だから、毎日が発見の連続で。
 たとえば今日は、灸饗(やいとぎょう)という言葉を見つけましたが、知らない言葉を見つけては用例を見ながら覚えています。
 漢検や日本語検定のリピーターのなかでは、模擬試験を自作してSNS上で発表する人が増えてきているのですが、私もそうして知らない言葉に出会ったり、「これはおもしろい!」と思う問題を集めて、模擬試験を投稿したりしています。

問題を解くだけでなく作っているのですか。

(祐里さん) 模擬試験を作るにはかなりのエネルギーと調査が必要で、「いつまでにやらねばならない」と思うと辛くなる。だから自分が面白いなと思った言葉を、「ついでに共有する」くらいの感覚でできたらと思っています。
 そのためにも知らない言葉に出会ったとき、これは出題できるなと思ったときには、必ずその場で携帯にメモします。
 3、4年前くらいまでは少なかったのですが、最近では個人で問題をネット上に投稿する人が増えてきています。
 今はTwitterでそういった方々と、敬語や故事ことわざの本などを題材に問題を出し合い、直前対策をするなどしています。

(あおいさん) 誰かと出題し合うことは、実は一番力がつく方法なのかもしれません。我が家の場合、たまたま同じ家にいる2人が問題を出し合えるので、ちょうど良かったのかもしれませんね。

家の中で、旦那さんが話の置いてけぼりになったりはしないのでしょうか。

(あおいさん) そんなことないですよ。私と息子が二人同時に賞をいただいたことを、とても喜んでくれています。
 夫も私が働いていた会社でマニュアルなどの資料を作る仕事をしておりまして、仕事柄、やっぱり言葉には気をつけたいと思っていることもあって、若い社員さんなど、たまに言葉の使い方が気になることもあるようです。1級とまではいかなくても、彼らにも受けて欲しいと考えているようです。まずは3級あたりから。興味が湧けばそれから徐々に上を目指していってほしいですね。

祐里さん、将来の夢、目標を教えていただけますか。

(祐里さん) 人文学者、研究者に惹かれますが、辞書や検定の問題を作る仕事もしてみたいです。
 今、興味があるのは古文書です。模試作りの過程で、問題文を探すのに著作権の切れている文章を国立国会図書館デジタルコレクションなどで見ていくと、資料の中に、ちょっとくずして書いてあって読めないものや、漢文に読み下しがついていないままのものがあったりして。そういった資料からも引用できるようになるのが、今の短期での目標です。

祐里さんの言葉の力をつけるために、子育ての中で意識されたことはありますか。

(あおいさん) 息子は漢字が大好きで自分でどんどん勉強するので、私はたまに聞かれたことに答えるくらいでしたけれども、それも今は答えられないことが多いです。
 子育てで心掛けていたのは、何か聞かれた時に自分があやふやだったら、ちゃんと調べてから返答するようにしていたことでしょうか。あと、「今の使い方はニュアンスが違うんじゃないかな」とか、そういう気づいたことはなるべく言うようにしてきました。
 一緒に書店に行くと、息子はほとんど参考書や辞書のコーナーにいるのですが、私としては小説とか、そういうものも読んで欲しい。今となっては息子の語彙数に私はかないませんが、それでも表現や使い方という点では年の功といいますか、一日の長があるのかなと思います。

(祐里さん) 私の語彙力は辞書ベースなので、検定を受けるなかでも生活の中にある言葉のうち、思わぬ言葉が抜けていることがあるのだと感じています。

(あおいさん) 「本や新聞を読んだら出てくるよ」と思いますし、情景描写の多い文学的な文章や、オノマトペの宝庫であるマンガなど、多様な表現に触れて幅を広げていってもらえたらと思っています。

本日は貴重なお話をありがとうございました。