日本語の総合的な能力を測る「日本語検定」(略称・語検、文部科学省後援事業)の2025(令和7)年度第1回(通算第37回)の試験が、6月13、14日に行われました。国内は47都道府県68カ所の一般会場と、学校や企業などを利用した237カ所の準会場、海外は米国(グアム)、中国(香港)でも実施され、国内外で計12,900人(延べ人数)が受検しました。最年長は北海道札幌市の93歳女性が2級を受検、最年少は6級に挑戦した東京都福生市の幼稚園に通う6歳の女児でした。

 「語検」は「敬語」「文法」「語彙(ごい)」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6つの領域にわたり、日本語を正しく使えるかどうかを測ります。難易度に応じて1級から7級に分かれており、幅広い年齢層がそれぞれの級の認定取得に挑戦できます。検定結果は7月上旬に公式ホームぺージに速報を掲載後、同月中旬、個別に郵送で受検者に通知します。

東京会場、559人が挑戦

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 東京23区の一般会場は、大正大学巣鴨キャンパス(東京都豊島区)。試験当日の14日は午前の曇天から夕方に雨模様となる中、午前(2、4、6級)と午後(1、3、5、7級)で計559人(延べ人数)が挑戦しました。

いつかは1級を

 午前の開始1時間以上前から外のベンチで問題集を見直していたのは、北区在住の72歳の女性です。71歳まで正社員として勤めた会社を昨年退職し老後生活に入りましたが、同じ頃、読売新聞の教育欄に載った日本語検定の記事を見て「日本語を鍛え直したくなった」と勉強に気持ちが向いたとのこと。同年6月に4級、11月に3級をそれぞれ突破し、今回は、初めて2級挑戦です。「正しい敬語と文法を使いたい。死ぬまでに1級を取りたいです」と意気込みを語ってくれました。
 記者腕章に加え語検のネームカードを下げた記者をスタッフと勘違いし「2級の会場は何階ですか」と質問してきたのは、北区から来たIT系営業職の女性(24)です。初めての語検で、こちらも2級に挑むとのこと。きっかけは、この冬に受検した秘書検定。準2級に無事合格できたものの、「正しい日本語の言葉遣いの大切さを意識させられた」と話します。そして「いつかは1級も取りたいです」と抱負を語り、問題集を開いていました。

若年層子ども新聞からの応募目立つ

 午前の検定は11時開始。この時間を過ぎて建物前やエレベーターホールにいるのは、大抵、わが子の受検に付き添ってきた保護者です。
 文京区の主婦(42)は、小学校2年の息子(7)が、初受検で6級と7級に挑戦しました。きっかけは自宅で購読している「朝日小学生新聞」の広告。「試しに問題を解いてみたら、本人も楽しんでいたので受検させました」とのこと。
 台東区のパート女性(40)は、小学4年生の娘(9)が初受検で4級を受けました。こちらは「読売KODOMO新聞」の広告を見て応募。「小1から学校で漢検(日本漢字能力検定)の団体試験を受けているのですが、本を読むのが好きで、漢字だけでなく、もっといろいろ日本語の勉強がしたいというので申し込みました」と説明してくれました。

 語検は、各級とも開始30分後から終了10分前までであれば途中退室が可能で、子どもの受検者の途中退出は珍しくありません。

 初めての検定で6級を受けた小学5年の男児(10)もその一人。早々に会場から飛び出して、公務員の父親(52)=渋谷区=と合流しました。父親いわく「家では、子ども新聞を2紙購読していて、どちらかの広告を見て申し込みました」と、やはりこのケースも新聞がきっかけ。男児は「ちょっと難しかった」と感想を話してくれました。
 板橋区の主婦(51)は、小学4年生の娘(9)の初受検(6級)の付き添いです。こちらも端緒は「読売KODOMO新聞」で、「申し込むと、過去問が送られてきて、まあまあ解けたので…」と、準備も万全といったところ。受検を終えて合流した本人は「割とできました」と晴れ晴れした様子でした。

一時帰国で初めての一般会場受検

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 グアム在住の小学4年生の男児(9)は、母親(39)に付き添われて来場し、6級に挑みました。グアムでは平日は現地校で英語で授業を受け、土曜日は日本語の学習のため補習授業校通い。その補習授業校の団体受検で、過去に7級には合格していますが、今回は現地校の夏休みを利用して母親と一時帰国したため、団体受検の代わりに、初めて日本の一般会場に来たそうです。
 母親は「初めて知らない子たちと受けるので緊張するかも…」と、環境の違いを気にしていましたが、検定を終えて合流した男児は、「(開始30分前から行われる事前の説明が)とっても分かりやすかった」と、特に戸惑うことなく検定に臨めた様子。出来については「まあ余裕かな」と自信を見せてくれました。

外国人も挑戦

 比較的易しい級の会場では、子どもに混じって外国人の大人の姿も目立ちます。
 6級検定場階のエレベーターホールにいたのは、英国出身で文京区在住の22歳男性。親も日本国内に駐在しており、自身も米国の大学の日本キャンパスに通ってます。「これを取れば日本語が上達すると思い、とりあえず小学生レベルという6級、5級を受けます」と話してくれました。
 6級検定終了後は、「とりあえず全部書いたけど、できているかは分かりません」と言葉少な。午後の5級検定後にも声を掛けると、「漢字を書くのが全然だめでした。読めるんですけど、書けない。漢字は難しいですね。また頑張ります」と答えてくれました。

 西東京市在住の英国人女性(47)は、初めての受検で4級に挑戦しました。日本に来て25年のパート勤務。受検にきっかけを聞くと、「漢検を5回受けて、ようやく3級まで取れたので、今度は、語彙とか長文とかにも挑戦したいと思った」と話しました。やってみてどうだったか聞くと「レベル的にちょうどよかった」との答え。「夏にはもっと頑張って、(秋の受検で)3級も受かりたい」と、声を弾ませていました。

高校ポスター見て応募

 葛飾区から来た高校1年の女性(15)は、初めての受検で3級を受けました。きっかけは在籍する高校に掲示されていた語検のポスター。担当教員に話を聞きに行き書類を受け取って申し込んだそうで、「もともと国語が得意で、本を読むのも大好きなので、文法などがどれぐらいできるか確かめたいというのが理由です」と受検理由を話してくれました。本日の出来を問うと、「一応書きましたけど、できているかどうかは心配です」と慎重に答える一方で、今後については「もっともっと上の級を目指したいです」と力強く語っていました。

 今回が2回目の受検で2級に挑んだのは、練馬区在住の高校3年男性(17)。鉄道系の短期大学の入試で有利になると聞いて、高2で3級に合格済み。「もっと上の級も受けてみたくなった」と今回挑戦した理由を話してくれました。結果を聞くと「結構できました」と手応え十分。大学受験本番向けていいステップになったようです。

1級「初受検は散々」

 最難関1級の試験会場フロア。終了時間を待たず途中退席した人にまずは話を聞いてみました。
 快く応じてくれたのは、荒川区から来たフリーライターの男性(49)です。学生の頃から文章を書くのが好きで、主にウエブサイトで仕事をしているといい、Webライティング能力検定も持っているとのこと。語検も仕事のスキルアップに役立つと考えて挑戦したそうですが、結果については「散々でした」と苦笑気味。今後について聞くと「まずは、きょうの結果をチェックして、それからです」と話していました。

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たぶん大丈夫

 検定終了時刻となり、1級の会場から動きだした受検生の波の中、インタビューに応じてもらえそうと狙いを定めて捕まえたのは、東京都町田市の弁護士男性(64)。「高3の息子が過去に3級を取っているのですが、過去問を見て私なら1級も受かるのではと思って…」と、家族に威厳を示す受検であることを明かしました。出来具合について「たぶん大丈夫だと思います」と自信を示し、「普段から(正確な)日本語を使って仕事をしていますからね」と笑顔を見せました。

会社の仲間に正しい日本語広める

 前回は2級を受けて準認定だったという練馬区の会社員女性(56)も、初めて1級に挑戦しました。「会社でお客さまへのあいさつ状などを作る部署。間違った敬語を使っていると恥ずかしい。正しい日本語を身に付けたいんです」というのが受検理由だそうで、「早く私が1級に受かって、会社の仲間に正しい日本語を広めます」と力強く語っていました。

目標は達人認定

 1年前の取材でも見掛けた漢検1級合格者の男性グループ(5人ほど)が今回も1級検定の余韻にひたっていました。「前回お話を聞けてない方はいますか」との問い掛けに応えてくれたのは、大学で文学を専攻したという25歳の会社員男性です。1級は10回ほど受検し、半分の割合で合格。23歳で1級に合格した際には、各級の最年少合格者を表彰する時事通信社賞に輝いたといいます。「23歳で最年少なんて…。もっと若い人がどんどん受けて合格したらいいのになと思っていました」と当時の気持ちを振り返りました。検定を受け続ける理由を聞くと、「毎回、知らない言葉に出合える。満点は取れませんから」と、語検の奥深さに魅了されている様子。「(1級合格10回で認定される)『日本語の達人』が目標です」と、今後の抱負を語ってくれました。

(時事通信社総合メディア局 吉田忠展)