コロナ禍の状況下において言葉を重ね理解しあうことの必要性

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キャリアコンサルタント

川田 博美

 コロナ禍で驚くほど、私たちの日々の生活は様変わりしました。緊急事態宣言により多くの人の行動に制限がかかり、働き方、学び方にまで影響を及ぼし、人々の価値観をも変えました。多くの人が在宅に切り替えてもできることの多さに驚いたことでしょう。私の勤務する大学でもゴールデンウイーク明けまでは授業はお休みとなり、授業開始後はオンライン授業というこれまでにないスタートを切りました。相談業務においても、早い大学では3月からオンラインに切り替わり、急激なICTの活用に舵を取らざるを得なかったように思います。


 多くの課題がある中、手探りで環境を作り対応せざるを得なくなり数か月経過しましたが、この変化に対応して、よりよい働き方、学び方をするためには一つの大切なことがあることに気づかされました。

 それは自分から積極的に参加することです。在宅が中心になったことで、普段のありふれた風景であった人と接しながらのコミュニケーションの機会が減り、各々の人に目的を持った行動が求められるようになりました。学び取る、あるいは仕事を終えるという目的を以前よりも強く意識し、その意識を持ちつつオンラインという場に参加する必要があるため自己発信が重要となってきたのです。

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 例えば学生の場合、授業が疑問を残したままで終わってしまうことも想定されます。今までは授業終了後に聞けたことも、オンラインでは毎回できるとは限りません。その場で質問できなければ、そのことについてチャットツールやコロナ禍の状況下において言葉を重ね理解しあうことの必要性コメール等を活用し疑問点を先生に伝えなければなりません。そして、先生の話を聞いて、まだ疑問が残るようであれば、さらに問いかけるというプロセスが大切です。そのように積極的にコミュニケーションをとることで理解を深めていくことができます。そして、それができないと大学での学びについていけないことにも繋がるのです。


 また仕事においても同様に、組織の活動の一部がオンライン化する中で、仲間と意思疎通を図り同じゴールを目指すこととなります。各々の目指すゴールに違いが生じないためにも、十分なコミュニケーションをとる必要があるのです。

 つまり、今までは相手が身近にいることで多くのことが忖度できましたが、コロナ禍の状況下においては日本人特有のコミュニケーションである「察する」ことが難しくなり、言葉を重ねることでお互いを理解する必要が増してきたのではないかと感じます。これを怠った場合には、ゴールの共有ができず、進むべき方向が定まらず、さらには組織としての存続が難しくなることもあるでしょう。疑問は残さず積極的に自分から発信し相違点を埋めていくことが求められます。

 そのためには、日本語を正しく使えることが大切です。言葉の決まりに従って、さまざまな言葉を正しく理解して、適切に使うことや、場面や相手に応じて、尊敬語や謙譲語を適切に使い分けることも大切です。特に、敬語については、コミュニケーションの上で欠かせないものです。

 私たちは、社会のなかで人と関わりを持ちながら生きているので、言葉を使って円滑なコミュニケーションをとることはどうしても必要なことです。

 直接会って話をする場合とオンラインで伝えあう場合とでは、コミュニケーションの深まり方も変わってきます。当然ですが、直接会って話す方が、コミュニケーションは深まり円滑になります。しかし、今後、今回のコロナ禍を契機に、オンラインを通じたコミュニケーションも常態化していくことでしょう。ですから、オンラインでのコミュニケーションも円滑にしていくことが大切です。そのことで、例えば、社会人であれば組織内でのチーム力が向上し、生産性の向上にも繋がるでしょう。大学生であれば、学びの中身が深まると思います。そして、個々人の人生の幅を広げていき、人生100 年時代を豊かに生きていく一助にもなると思います。まずは、日本語検定で自分の日本語力を確認してみてはいかがでしょうか。

川田 博美(かわだ ひろみ)

株式会社大塚商会において教育、企画等に携わり退職。その後は私立中学校講師等を経て、現在はキャリアコンサルタントとして、クライアント自身が前進する一歩を後押しする活動をしている。自治体向けに公共職業訓練での指導や企業向けには対象者別研修を担当するほか、生徒学生向けには初年次教育、キャリア教育の講師業及び相談業務を行う。