ビジネスパーソンの「強い味方」になる日本語検定

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伝わる文章の書き方講師

赤羽博之

 ビジネスパーソンが身につけるべき最も重要なスキル、そのひとつは間違いなく文章力、書く力です。日々の仕事でメールやチャットを一度も“使わない”日は、年にどれくらいあるでしょうか? 今後リモートワークがさらに増えるとなれば、文章で伝える力の重要性は、ますます高まっていくはずです。

 ところが文章で伝えることは、皆さんも感じられているとおり、なかなか大変です。届いた言葉の意味を解釈するのは常に相手――。たとえば「結構です。」を「たいへん結構」と解釈するか、「もう結構」と受け止めるか、決めるのはすべて読み手なのです。加えて、書いたものはどんどん独り歩きし、時に拡散していきます。対面でのコミュニケーションのように、相手の様子をうかがいながら伝える内容を微調整するようなことは不可能なのです。

 では、文章で伝える力を高めていくには、どんな方法があるでしょうか。「検定」へのチャレンジを通じて「基本的な日本語力」を身につけることは、とても有力な手段です。たとえば、読みやすくスッキリした文章を書くコツのひとつ~「言葉の重複を省く」を考えてみましょう。実行するには、重なっている言葉を違う表現に置き換える必要が生じます。その際にどんな「候補」が思い浮かぶかが、文章の出来を直接左右するのです。検定へのチャレンジで身につけられた「語彙」「言葉の意味」「文法」の裏付けや応援があれば、こんなに心強いことはありません。

 文章力をテーマとする企業・団体研修で最も頻繁に質問されるのは、実は「敬語」の扱い方についてです。検定の過去問などを拝見して感じたのは、実際に起きそうな場面を想定した敬語のトレーニングが繰り返しできることです。敬語のルールを暗記したところで、すぐにスムーズなやり取りに結びつくわけではありません。この点でも検定受検はビジネスパーソンの「強い味方」になってくれるでしょう。

 コミュニケーションは、よくキャッチボールに例えられます。自慢の剛速球を披露することが目的ではなく、投げるべきは相手が捕りやすいボール。ビジネスの場面に置き換えれば、重要なのは相手が分かる言葉で丁寧に伝えることです。検定へのチャレンジを通じて身につけられた少々難しい言い回しや、普段あまり使わないような四字熟語などは、それを「使う」ことが目的ではない点を忘れないでくださればと思います。見事合格され、ご自身の日本語力に自信を持たれた皆さんには、より一層「読まれ方を考える」大切さにも、心を配っていただければと思うのです。

赤羽 博之(あかばね ひろゆき)

伝わる文章の書き方講師/耕文舎代表。「日経電子版」企画制作ディレクター、イオンカード会員向け月刊生活情報誌「mom」編集長など、25年を超える編集・制作現場での経験をベースに、2007年から文章力アップをテーマに講師として活動。2017年7月~18年6月の1年間には企業・団体研修などで105日間登壇。著書に『すぐできる!伝わる文章の書き方』『きちんと伝わる!センスのよい文章の書き方』(ともに日本能率協会マネジメントセンター刊)がある。