日本語の総合的な能力を測る「日本語検定」(略称・語検、文部科学省後援事業)の2022(令和4)年度第1回(通算第31回)試験が、6月10、11日に行われました。国内は47都道府県78カ所の一般会場と、学校や会社の施設を利用した304カ所の準会場、海外は米国(グアム)で実施され、国内外で計18,710人が受検しました。国内の最年長は札幌市の90歳女性、最年少は宝塚市の5歳女子でした。

 「語検」は「敬語」「文法」「語彙(ごい)」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6つの領域にわたり、日本語を正しく使えるかどうかを測ります。難易度に応じて1級から7級に分かれており、幅広い年齢層がそれぞれの級の認定取得に挑戦できます。検定結果は7月上旬に受検者に郵送で通知するほか、語検の公式ホームページに速報を掲載します。

東京会場で614人が受検

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 東京の一般会場は大正大学(豊島区西巣鴨)。関東甲信は梅雨入り後でしたが、この日は薄日が差すまずまずの天気となり、マスク姿の受検者も薄着が目立ちました。午前(2、4、6級)と午後(1、3、5、7級)に分けて計614人が受検しました。新型コロナウイルス感染流行は、各種制限も緩和され、緊張感が薄れてきましたが、会場ではキャンパス入構時の検温や会場入り口での消毒、会場スタッフのフェースシールド着用など、引き続き徹底した感染対策が講じられました。

「親子受検で語検満喫」

 世田谷区から来た高校2年生女子は、母娘ダブルでの語検初チャレンジで、そろって3級を受けました。大学入試で優遇されるケースがあると知り、語検について二人で調べているうちに「なんだか面白そう」とお母さんも決意したのだとか。勉強法は、娘さんが「スマホで検索して、過去問をどんどん解いて数をこなす」のに対し、お母さんは問題集を購入して「解答・解説もじっくり読み込む」やり方。終了後、大学で国語・日本文学志望という娘さんは「四字熟語が一つ分からなかっただけ」と自信をのぞかせ、「全然ダメでした」と笑うお母さんともども母娘で語検を満喫した様子でした。

「役に立つ文法と敬語」

 都内の大手就職情報会社に勤務する女性会社員(28)は、2年ぶり2度目の2級挑戦。検定突破は数年前の3級合格が最後で、捲土重来を期しましたが、「漢字が…。漢字は膨大でどう勉強したらよいやら…」と渋い表情でした。大学で国語・日本文学を専攻し、「日本語には自信と関心がある方」。職場では文書やメールの文章の誤りが気になり、間違いを見つけては同僚に注意するので「怖がられている」そうです。「検定の文法や敬語は実社会でも役に立つ。あとは漢字ね」と会場を後にしました。

「孫に自慢できるように」

 江戸川区から来た79歳の男性は、4回目の1級挑戦。「物忘れ対策」のためさまざまな検定を受けており、語検のほかに歴史、数学、漢字各分野で検定2、3級を取得、それぞれ上級にチャレンジ中とか。語検に取り組むのは「日本語の乱れが気になる」からで、お孫さんに正しい言葉遣いを身に着けてもらうのが願い。1級合格には「全然まだだよ。敬語には自信があるのだが、漢字がね。物忘れがすごいんだ」という。四字熟語をびっしり書き込んだノートを開きながら「孫に自慢できるように頑張ります」と仕上げの復習に取り掛かりました。

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「語検合格社員に手当」

 江東区の会社役員男性(48)は語検初挑戦で3級を受検しました。勤務先の会社では社長の発案で約10年前から、社員に語検3級以上の取得を推奨しており、「経営者幹部として自分も」とのこと。建設業のため、取引先や顧客との文書やメールが多く、「おかしな文章はトラブルの原因になるし、印象も悪い」という理由で語検が導入されたそうです。語検とIT関係など計3種類の検定を取得した社員には手当が付く制度で、語検は2級、1級に昇級すればその都度手当が1万円上積みされる仕組み。社員のスキルアップの動機付けとして語検が評価されているようです。

「中間テスト不振で発奮」

 3級を受けた豊島区の中学3年男子は、小学6年のときに通っていた学習塾で受検し、準3級認定となって以来の語検チャレンジ。得意で自信があったはずの国語の成績が1学期の中間テストで振るわなかったのがきっかけで、お母さんも「準3級は中途半端。中学のうちに3級を」と強く勧めたそうです。お母さんによると「語検の問題内容が気に入っているみたい」で、楽しみながら勉強できたようです。語検対策の勉強が期末テストにもきっと役立つことでしょう。

「兄に続け」

 北区から来た小学3年の男子は昨年7級に合格し、今回は6級を受検。付き添ってきたお母さんによると「中学生の兄が3級を目指していて、学校の先生の勧めもあって」と、お兄さんが刺激となった語検チャレンジです。ピアノも習っていて、「コロナで発表会がなくなり、慣れない会場で緊張する経験をさせたい」というお母さんの思いも後押しとなりました。高校までに2級合格が目標です。

(時事通信社編集局 大澤克好)