日本語の総合的な能力を測る「日本語検定」(略称・語検、文部科学省後援事業)の2022(令和4)年度第2回(通算第32回)の試験が、11月11、12日に行われました。国内は47都道府県76カ所の一般会場と、学校や会社の施設を利用した365カ所の準会場、海外は米国(グアム)、アイルランド(ダブリン)、イタリア(フィレンツェ)の3カ国で実施され、国内外で計21,484人が受検しました。国内の最年長は神奈川県相模原市の89歳男性が1級を受検、最年少は6級に挑んだ兵庫県宝塚市の6歳女児でした。

 「語検」は「敬語」「文法」「語彙(ごい)」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6つの領域にわたり、日本語を正しく使えるかどうかを測ります。難易度に応じて1級から7級に分かれており、幅広い年齢層がそれぞれの級の認定の取得に挑戦できます。検定結果は12月上旬に受検者に郵送で通知するほか、公式ホームページに速報を掲載します。

東京会場で630人が受検 アイドルの「ゆっふぃー」も挑戦

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 東京の一般会場は上智大学四谷キャンパス(千代田区紀尾井町)。小春日和の好天に恵まれ、出入口の消毒スプレーやマスク着用の徹底など新型コロナウイルス感染防止対策がすっかり定着した会場を計630人が受検に訪れました。

 東京では今回、女性ソロアイドルの「ゆっふぃー」こと寺嶋由芙さんが、かねてから興味があった語検に初挑戦。都内の準会場で1級と2級を受検しました。中学・高校の国語教諭免許を持つ寺嶋さんならではの上級チャレンジで、終了後、ツイッターに「難しかったー!」「うぉー!来年も頑張ります」と投稿、語検PRに一役買いました。

「正しい表現を知ってこそ」

 寺嶋さんは「アイドルという仕事柄、ライブのMCや日々のSNS更新でたくさんの言葉を発信する立場。状況に合わせて使う言葉もオンオフを切り替えられるように、まずは正しい表現を知っておかねば」という思いもあって受検を決意したそうです。語検のPRキャラクター「にほごん」もお気に入りの一つで、受検準備の勉強では「普段の生活やビジネスの中で実践的に役に立つ知識を身につけられる」と実感。「人生がより豊かになるなぁ」と明るく“語検推し”を語ってくれました。

「友人の英検に対抗」

 午前の試験開始から30分で会場を出てきた小柄な女子。聞いてみると語検は初めてという小学4年生で受けていたのは4級。「時間が余ったので」「午後は3級も受ける」と平然とした様子です。帰国子女の友人が英検を受けるというので「じゃあ私は日本語検定で」と対抗したのだとか。国語が得意で「読書もクイズも大好き」という彼女にとって、語検は合否も含めて楽しめるゲームだったようです。

「伝えたいこと知りたいこと」

 江戸川区から来た小学5年の女子児童は、生まれながら両耳が聞こえないろうあ者。今年春に7級に合格し、今回は6級に挑戦です。お母さんに聞くと、手話で日常生活に問題はないものの、文章を正しく理解したり、書いて伝えたりという意味で、日本語がどのぐらいできるかとなると不安があり、家庭教師の先生に相談したら語検を教えられたそうです。「耳で聞く言葉の響きを全然知らないから、雨の『しとしと』『ザーザー』とか、擬音語や擬態語は使い分けが難しいみたい。放っておいたら後々苦労することだから」。今後も語検上級を目指して応援していきたいということでした。

「実力を証明したい」

 練馬区の公務員男性(25)は、一昨年から通算5回目の2級チャレンジ。そもそものきっかけは、職場で年長の同僚たちから「言葉遣いが悪い」と注意されたこと。仕事では口頭でも文書でも対外的なやりとりでトラブルは一切なく、正しい日本語をわきまえていると自覚しており、語検合格でそれを証明してみせようと考えたそうです。「どうだ文句あっか、てね。今回は過去4回より少しやさしかった気がするし」と合格イメージを膨らませていました。

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「正しい言葉遣いで居心地よく」

 都内の30代女性ウェブデザイナーは、初の語検で2級に挑戦。仕事ではメールや文書でやりとりする機会も多く、自分であれ他人であれ「正しくない言葉遣いは居心地が悪い」と感じてきたそうです。きちんとした日本語が本当に身についているかどうか「検定合格という形で表したいと思って受検しました」。試験は「漢字と語彙で絶妙に弱点を突かれた」のが気がかり。日本語磨きを続けていく気構えです。

「どんな相手にも通用する日本語力を」

 草加市の男性(65)は初挑戦で3級を受検。「この歳ですから、脳に刺激を与えないと」と、世界遺産など各種の検定にチャレンジしており、今回は語検に照準を合わせました。損保会社を退職後、ビル管理や学校の事務長、裁判所の調停委員などさまざま仕事を体験。「相手がどんな人であれ、相手の言うことを理解できるか、相手を理解させられるか、語彙力含め要するに日本語の能力が問題になる」との思いを語検で新たにしたそうです。

「言葉だけが頼り」

 調布市の20代女性は初受検で2級にチャレンジ。コールセンターで働いていたとき、言葉だけが頼りの業務だけに「言葉がきちんと伝わっているか、正しい日本語でうまく伝えられるようにするにはどうしたらいいか」と気になり、語検を意識していたとか。次の就職先の会社に語検2級以上の合格者に賞金が出る制度があると知って、満を持しての受検。手応えを感じている様子でした。

「奮起の拠り所に」

 入間市の会社員女性(41)は初受検で2級と3級に挑戦。職場の人間関係のトラブルから今は休職中で、「個人的に自信をなくしがちなので、自分を奮い立たせる拠り所として検定合格を目指しました」という。学習塾で国語を教えていた経験もあり「2級はちょっとあやしいけど、3級はいけたと思う」ときっぱり。語検が再出発へ力強い踏切台になることを祈るばかりです。

(時事通信社編集局 大澤克好)