課題解決型学習と言葉の力

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柏市立つち小学校

校長

梅津 健志

 柏市立土小学校は、千葉県柏市の南部にある創立124年の学校です。学校名を伝えると校名の「土」とは何かと思われます。まずはその由来をお伝えしたいと思います。土小学校がある場所は柏市増尾4丁目で、増尾という地番です。昭和29年に柏市となる前、この地域は土村という村でした。土村の唯一の小学校が土小学校だったのです。しかし、なぜ増尾に土という名称だったのでしょうか。増尾は以前増尾村で、同様に現柏市南部地域には11の村が点在しており、それが合併して土村となる際、村名決定が紛糾した時、村の長老たちに向かってある若者が「11の村が一つになるのだから、十一と書いて土としてはどうか」と提案し、農業に大切な土が村名になるのは、大変よいことではないかと決定したと伝わっています。 土とは妙な名前だと思いましたが、この話を聞くと言葉には深い意味があり、言葉による納得解がとても大切なことを改めて感じます。

 そんな土小学校は、令和4年度コミュニティ・スクールへと経営体制を移行し、土地域を教材とした生活科と総合的な学習の時間の学習を教育課程の柱としました。
 その学習は次のようなものです。1年生は地域のビオトープや公園で学んだことを使って「土っ子ランド」を作り、幼稚園児等を招いて楽しんでもらうこと。2年生は学区内32のお店や施設を訪れ、その魅力を知り、それを伝えようとポスターやチラシや動画を作って事業所に届けること。3年生は100周年記念に地域の皆さんが作ったふるさと資料室にある古道具に興味を持ち、その使い方を地域の方から学び、その魅力を校内や保護者に広めること。4年生は、通学路の安全確保を課題に取り組み、安全対策が必要な箇所を見つけ、警察や市役所や町会に提案し改善に向けること。5年生は学区内に僅かに残る農家の野菜直売所を知り、農家の役に立つ仕事をしたいと農家に通い課題を見つけ、直売所に掲げるポスターや野菜を使ったレシピの作成など、農家の支援になる活動を考えて行動すること。6年生は、地域の昔話、神社仏閣、古い坂など興味を持ったことをテーマに取り組み、地域向けに発信し土地域の魅力を広く知らせること。この学習に初年度でありながらも、約150名の地域の方々が協力してくださり大変充実し、子供たちの言葉による発信が地域に僅かながらも影響をもたらし、教職員も本当の意味で初めて課題解決型の学習の意義と達成感を味わいました。

 子どもたちは生活科と総合的な学習の中で、調べるために読む、質問しその答えを聞き取る、聞き取った内容をメモする、メモをまとめる、そして相手にわかるように伝える、短い言葉で伝える、映像で伝える、プレゼンで伝えるというように言葉に関わる活動が多く、この学習で最も必要になったのは言葉の力です。大村はま先生が「実の場」での言葉の学びが大切であるとおっしゃっていましたが、国語の授業とのカリキュラム・マネジメントが大変重要だと再認識をしました。
 そこで、各学年の発達段階に応じた総合的な言葉の力を腕試しする機会として「日本語検定」を取り入れ、興味関心を持ち受検してみる子供が増え、土小の学びの充実につながればと願い取り組みを始めました。初めての受検には35名が挑戦し、その中から最優秀の読売新聞社賞を4名が受賞したのは驚きの結果でした。
 学んだことを実際の課題解決型学習で使うこと、課題解決学習をよりよくするために言葉の力を磨くこと、このスパイラルが、日本人として日本語を適切に使いながら、さらに第2第3の言語を身に着けてコミュニケーションの幅を広げ、人生を切り拓き、社会を創り変えていく基礎力になるものと期待しています。

梅津 健志(うめづ たけし)

柏市立つち小学校 校長

略歴:千葉県公立小学校で教諭を務めた後、柏市立柏第一小学校教頭等を経て柏市教育委員会指導課長、千葉県教育庁学習指導課学力向上室主幹等を歴任。
趣味:登山、ランニング