日本語の総合的な能力を測る「日本語検定」(略称・語検、文部科学省後援事業)の2023(令和5)年度第1回(通算第33回)の試験が、6月9、10日に行われました。国内は47都道府県77カ所の一般会場と、学校や企業などを利用した279カ所の準会場、海外は米国(グアム)でも実施され、国内外で計14,490人が受検しました。国内の最年長は神奈川県相模原市の90歳男性が1級を受検、最年少は7級に挑戦した東京都文京区の6歳の男子児童でした。

 「語検」は「敬語」「文法」「語彙(ごい)」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6つの領域にわたり、日本語を正しく使えるかどうかを測ります。難易度に応じて1級から7級に分かれており、幅広い年齢層がそれぞれの級の認定の取得に挑戦できます。検定結果は7月上旬に公式ホームページに速報を掲載後、7月中旬以降、個別に郵送で受検者に通知します。

東京会場で656人が受検

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 東京の一般会場は上智大学四谷キャンパス(千代田区紀尾井町)。関東の梅雨入りが伝えられた直後ながら薄日の差すまずまずの天候で、計656人が挑戦ました。

「多彩な表現を求めて」

 船橋市の男性会社員(25)は、昨秋に続き二度目の2級チャレンジ。もともと文章を書くのが好きで、趣味で小説を書いたりしていたそうで、現在はゲーム制作会社でゲームのシナリオ作家を務めています。「ゲームの新しい展開とオペレーションを伝えようとして、語彙力の乏しさを痛感することがしばしば。もっといろいろな言葉や言い回しを知っていればとそのたびに思う」というのが受検のきっかけ。最初の挑戦で合格点に達しなかったことで、表現者としてさらに闘志に火が着きました。

「もっと早く語検を知っていれば」

 初挑戦で3級を受検した西東京市の高校3年男子は、志望大学の総合型選抜で「語検3級以上、英検2級以上」が合格条件という。大学の出願締め切りが9月のため、チャンスは今回の一度きり。大急ぎで準備しましたが、「英検はもう持っているけど、語検を知ったのは大学の受験案内が初めて。知っていたら受けていたのに。もっと語検を宣伝していいのでは」と付き添いのお母さんともども苦笑いです。とはいえ、実は彼、ダンススポーツ競技のユース部門で世界選手権出場も果たしたトップアスリート。持ち前の集中力とファイトで語検合格とともに新たなステージを切り開いていくことでしょう。

「発見する楽しみ」

 板橋区の会社員男性(24)は、初受検で2級(午前)と1級(午後)にチャレンジ。学生時代から国語、特に現代文が好きで、インターネットも活用して、さまざまな文章表現を探し求めるのが趣味。印刷関係の仕事柄もあり、見慣れない表現や言葉を見つけるたびに新鮮な感動を覚える一方で、「誤用かも。そのまま自分も使っていないか」という心配が募り、受検を思い立ちました。「2級は普段使いの日本語。1級は別世界でした」が、終了後の感想。「こんな表現があるんだという発見が次々」で、難問に苦しむというより、日本語の世界の奥深さにひたすら驚嘆する1時間だったようです。

「ひたすら力試し」

 世田谷区から来た小学5年の女子児童は、多くの大人たちに交じって2級に挑戦。新聞で語検を見つけたお母さんの勧めで3年前に7級に合格して以来、着実に昇級を重ねて大卒レベルのステージに到達しました。国語が得意で、公文式では既に高校教材まで先取り学習を終えているものの、「実力レベルは公文だけでは分からない」というお母さんの判断もあって、語検を続けています。一時は英検の上級受検も気になりましたが、「国語力以上の英語力は身につかない。まずは国語だ」というお父さんのアドバイスも語検チャレンジを支えています。

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「大学受験に備えて」

 土曜授業の放課後を利用して受検に訪れた高校1年の女子生徒は、2級に初挑戦。退席可能となる開始30分余りで出てきました。早くも大学受験を意識していて文系志望という。既に「漢検」「文章検」の2級に合格しているので、「語検もあれば何か役に立つかな」ということで受検しました。手応えを聞くと「まあ、そこそこ」と落ち着いたもの。通っている都心の私立高には系列の大学があるものの、「たぶん行かない。ほかを受験する」という。目標を見定めて準備を進めている様子で、語検が大学合格への確かな里程標の一つとして役立っているようです。

「日本語を正しく使いたい」

 江戸川区の大学1年女子は、初の語検で4級を受けました。今春の入学後、学内で「大学3年までに4級以上の検定合格が望ましい」と言われての受検ですが、キャンパスやアルバイトで年長者を含めさまざまな人と話す機会が増え、「あいさつや敬語を正しく使えるようになりたいと思った」のが大きな理由。将来の志望は小学校教員。「正しい日本語を使えて、人に対しても間違いを正せるようになりたい」と日本語力の深化に意欲を燃やしています。

(時事通信社編集局 大澤克好)