日本語検定を大学で行うことの意義

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淑徳大学教育学部

教授

國府田 祐子

 淑徳大学教育学部では、実践的指導力の育成を重視したカリキュラムを構築しています。学生は1年次から教育現場に行き、「先生」と呼ばれる経験を重ねます。

 多くの大学の教育学部では、3年次ないし4年次で教育実習・保育実習に行きます。本学部は、その前段階として、1年次から小学校や幼稚園や保育所等において実習を義務づけています。小学校教員を目指す初等教育コースでは、近隣の4市1町の教育委員会と連携し、毎年、学生を受け入れていただいています。幼稚園やこども園の教員、保育士を目指す幼児教育コースでは、11法人と連携し、同じく実習や正課外のボランティア先としても実践力を高める場をいただいています。このような「往還型教育」を1年次から行うことによって、学生はさまざまな気づきを得ています。

 現場実習において、学生が苦労する課題の一つに、「実習日誌を書く」学修があります。今のところ実習日誌は手書きです。実習日誌を書くためには観察力、記憶力、情報選択力、考察力など多くの言語能力を必要とします。たくさんの専門用語を駆使しなければなりません。

 特に幼児教育コースの学生が書く実習日誌は文章量が多く、漢字の力が不足している学生は記述に苦労しています。連日、数時間かけて夜遅くまで書いている学生もいます。丁寧に見てくださる園では漢字も一字一句添削してくれます。漢字の指導に時間がかかり、肝心の内容の話になかなか入ることができなかったという声もあります。現在の実習日誌は手書きですが、今後デジタル化されたとしても、適切な漢字を選択する力は、本人の言語能力次第ということになります。

 また、教育実習・保育実習に行く前後には、大学内で、事前事後学習という準備と振り返りの授業を行います。小学校に教育実習に行き、大学へ戻って行う事後学習の際、多くの初等教育コースの学生が発する言葉があります。それは、「自分の語彙の乏しさ」です。ある学生は、「子どもを褒めたいときに、『すごいね』しか思いつかなかった」と振り返りました。別の学生は、「子どもに勉強を教えるとき、言い換える言葉が思いつかなかった」と反省していました。これらの学生は、現場実習を通して、自らの語彙力に目が向き、言葉の力を伸ばそうとする意識が持てたということになります。

 このように本学部では、大学1年次から、社会人レベルの日本語能力が問われます。日本語検定の6領域「敬語、文法、語彙、言葉の意味、表記、漢字」のうち、どの力の向上も不可欠です。また、学部の開設以来、学生は日本語検定の合格を目指して努力してきました。合格することはもちろん大切ですが、合格を目指す過程にも意味があります。確実な日本語能力の育成と、その意識づけとして、日本語検定は大変役立っています。

國府田 祐子(こうだ ゆうこ)

淑徳大学教育学部 教授

早稲田大学大学院教育学研究科国語教育専攻修士課程修了。東京都公立小学校教諭、東京福祉大学短期大学部専任講師、松本大学教育学部准教授、淑徳大学教育学部准教授を経て、現職。専門分野は国語科教育学など。2021年9月より日本語検定委員会研究委員。
ホームページhttps://www.shukutoku.ac.jp/academics/kyouiku/