地域の子どもの目の輝きを求めて
-「日本のことば」という宝物が人の心を穏やかに平和にする-

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社会福祉法人東行福祉会

吉田緑こども園 前園長

長谷川 智子

 高杉晋作の墓所、東行庵の傍らに建つ吉田緑こども園は過疎と呼ばれる静かな農村である。山があり、小川があり東行庵の池には季節ごとの色とりどりの花が咲き、散歩道には草花から虫が飛んで来て子ども達の歓声があがる。子ども達を取り巻く自然環境は本当に豊かで穏やかでやさしいものだ。また家に入っては二世代三世代同居の家庭も多く、昔ながらの家族で育っている。ただ、園の子どもは定員110名を上回るが近郷の町(隣町の菊川、小月、王喜等)から通園する子どもが多い。その中で地元吉田と言われる地は毎年小学校に入学する児童が5~8名で、学校全体でも50名を下回る。

 子ども達を取り巻く環境は穏やかでやさしいものだが、進取の気性というか新しいものに本気で取り組む性格ではない。従って中学へ入ると多勢の中で埋没してしまうことにもなる。

 そのためにも社会福祉法人であるこども園で、地域の為に「何が出来るか」は大きな課題である。色々な町おこし行事にも園は率先して参加する様にして来た。その時、日本語検定の話を聞く機会があった。
 ことばの教育は本人の生活環境を変え、自信につながると思う。中学に入学すると吉田小学校の子どもは他校から通う子ども達と一緒に教育を受ける事になる。
 広い世界に入った時の対話力、そして多様な他者と力を合わせる事の出来る子どもに育って欲しいと常日頃から思っていた。
 美しいことばを身に付ける事は、自分自身の人生の来し方の宝になり自信を持って自分のやりたい事をみつけるチャンスでもある。

 園としては、そんな子どもの育成を目指してこの日本語検定を受ける事をすすめている。受検生には受検料を園で負担しているが、小学生だけでない。中学生でも同様に負担しているが、クラブ活動等でなかなか日程が合わないのが残念である。コロナ禍では少々受検生は減じたが、その分保護者が受けてみたいと言って来るようになった。また表彰された子どもがいた事で、俄然過去問題で学習している子どもも多くなった。

本年転勤してこられた小学校の校長先生が吉田小学校の子どもの印象を

本気で学習する
素直でやさしい
本をよく読む

とおっしゃっている。

 学習意欲を身に着けた子ども達は、単なる〈素直・やさしい〉だけでなく、友だちとコミュニケーションもとれ、大きな広い世界の中でも自分を思う存分発揮して来るようになったのだろう。中学でも成績も優秀と聞いている。
 私は成績云々ではなく、みんなで正しい日本語、美しい日本語を使う環境が広がる事を心から念じている。

 この「日本のことば」という宝物が人の心を穏やかに平和にすると信じている。
 末永く地域の子どもを支援したいと思う。

長谷川 智子(はせがわ さとこ)

社会福祉法人東行福祉会 吉田緑こども園 前園長

小学校退職後、教育委員会で教育相談・指導委員として四年間の後、吉田緑保育園(後こども園園長として)に十八年間勤めている。

吉田緑こども園 https://www.yoshidamidori-kodomoen.com