日本語で磨く気づかいの力

photo

株式会社シーストーリーズ 代表取締役

企業研修講師、選ばれるコミュニケーション力育成家

川原 礼子

 はじめまして。企業研修講師、選ばれるコミュニケーション力育成家の川原礼子と申します。私は、営業担当やカスタマーサポート担当、ホテル・旅館の接客担当の方々などに、お客様から「あなたにお願いしたい」と思っていただけるコミュニケーションスキルを教えています。

 電話やメール、対面での対応、組織内のコミュニケーションも、得意な領域です。

 私のキャリアのスタートは少し変わっていました。大学留学したカリフォルニアで永住権を取得し、開業した寿司店で女将として働き始めたのが最初の一歩でした。

 飲食店では、お客様一人ひとりを大切にすると、新しいお客様を連れてきてくださる一方で、少しでも疎かにするとじわじわ離れていくものです。25歳にして1円ならぬ1セントの重みを感じる毎日でした。この経験が、顧客対応の醍醐味を知るきっかけになりました。

 14年間のアメリカ生活を終え帰国してからは、株式会社リクルートのCS推進室に就職し、顧客対応窓口の教育責任者を務めました。ある日、お客様からのお叱りのご連絡を責任者として対応した時のことです。私が「では事実確認をして、あらためてご連絡します」とお伝えしたところ、お客様から「ということは、私の言っていることが事実ではないと思っているのですか!?」と、さらなるお叱りを受けてしまいました。言葉の用い方で相手を不快にさせたケースです。

 ただ、こうした失敗も経験という財産になります。やがて社内だけでなく社外からも研修やセミナー登壇の依頼が来るようになり、その数が100回を超えたころで退職、会社を立ち上げました。社名のシーストーリーズの「シー」はC、Customer、Clientを意味します。営業など顧客対応者は、お客様の「商品利用」というストーリーの重要な登場人物、そこに誇りをもっていただきたいという願いを込めています。以降10年間で、200社22000人以上の企業人と向き合ってきました。

photo

 そんな私が2023年2月、『気づかいの壁』という本を出版しました。気づかいに壁?と思われるかもしれませんが、困っている人を前にした時に、どうしようかと躊躇してしまった経験はありませんか。「余計なおせっかいかもしれない」「スタンドプレーと思われるかもしれない」と、自身の心に壁を作ってしまうのです。

 講師として「新人が育たない」「報連相が定着しない」「お客様からお叱りを受ける」。毎年のように企業の方々からこうしたご相談を受けるのですが、いずれのケースもコミュニケーション不足が原因なことが多いです。一人ひとりが気づかいの壁を乗り越えたり、相手の心の壁を尊重することが、解決の糸口になるのではないかと感じてきました。

 この本では、そうした乗り越えたい自分の壁と、尊重したい相手の心の壁をテーマに、誰にでもすぐにできる気づかい行動をご紹介しています。どれも、私がこれまで出会った「あなたにお願いしたい」と言われ続ける人たちが実践しているものです。

 出版以降、嬉しいことに続々重版となり、ダイヤモンド・オンラインに書いている記事は100万PVを超えるなど、たくさんの方に読んでいただいています。

 本の中で多く取り上げているのが「伝え方」です。先の事例にあったとおり、同じ内容でも、伝え方一つで感じ良くも悪くもできます。

 例えば、あなたは職場で、「このメール、投げておいて」「この苦情、処理しておいて」といった表現を聞いたことはないでしょうか。乱暴に言った方がカッコいいように思うかもしれませんが、どれも人をモノ扱いしているかのように聞こえます。「処理」には、「物事を取りさばいて始末をつけること」という意味があるそうです。万が一にでもお客様の耳に、申し出た苦い感情を「取りさばいている」などと入ったなら、「またお願いしたい」という思いは生まれないでしょう。

 「メールは送るもの」「苦情は対応するもの」。正しい日本語で伝えることは、相手を尊重することでもあることがわかります。

 私は研修で、正しい日本語を学ぶメリットを2つ伝えています。

 一つめは調整が容易であるという点です。基本の正しい日本語を知っておけば、フランクな話し方が好まれる場面でも「調整」ができます。知らないと、ただの我流。フランクは度を越えると「馴れ馴れしい」と受け取られ、後々クレームになることもあります。

 もう一つが自信です。

 私自身、14年間ぶりに日本に帰国した時は、敬語に自信がなく人前で話すことが苦手でした。そこで苦手を克服するために正しい日本語を学び、コミュニケーション力を高めていきました。やがてお客様対応にも自信がついていき、責任者になることもできました。学んできたことは、今の私の財産になっています。

 そんな私のおすすめ勉強法は「日本語検定」への挑戦です。人は目標があるとスイッチが入ります。頑張りが数字で確認できますし、級を取得する喜びも得られます。勉強するなら、楽しんだ方が続きますよね。

 あなたも正しい日本語を学んで自分の財産を増やし、気づかい上手さんを目指しませんか。

川原 礼子(かわはら れいこ)

株式会社シーストーリーズ 代表取締役

企業研修講師、選ばれるコミュニケーション力育成家。2014年に9年間勤めたリクルートから独立。情報サービス会社、旅行会社、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。ニックネームは「れーこ先生」。日本アドラー心理学協会アドラー・カウンセラー、ブランド・マネージャー認定協会 インターナルブランディングプラクティショナー、青山学院大学履修証明プログラム修了ワークショップデザイナー。2023年2月、ダイヤモンド社より『気づかいの壁』を上梓。1年半を待たず6刷、台湾版も出版されている。

株式会社シーストーリーズ ホームページ
 https://2017c-stories.com/


ダイヤモンド・オンライン記事
 https://diamond.jp/ud/authors/63cf7b4aa53aef5028000000


ダイヤモンド・オンライン(インタビュー記事「だから、この本」)
 https://diamond.jp/list/series-books/reiko_kawahara