日本語の総合的な能力を測る「日本語検定」(略称・語検、文部科学省後援事業)の令和6(2024)年度第1回(通算第35回)の試験が、6月14、15日に行われました。国内は47都道府県69カ所の一般会場(15日)と、学校や企業などを利用した232カ所の準会場(14、15日)、海外は米国(グアム)、イタリア(ローマ)でも実施され、国内外で計12,107人が受検しました。国内の最年長は北海道札幌市の92歳女性が2級を受検、最年少は7級に挑戦した東京都福生市の5歳の女児でした。

 「語検」は「敬語」「文法」「語彙(ごい)」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6つの領域にわたり、日本語を正しく使えるかどうかを測ります。難易度に応じて1級から7級に分かれており、幅広い年齢層がそれぞれの級の認定の取得に挑戦できます。検定結果は7月上旬に公式ホームページに速報を掲載後、7月中旬以降、個別に郵送で受検者に通知します。

東京会場で538人が受検

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 東京都の一般会場は、大正大学巣鴨キャンパス(豊島区西巣鴨)。梅雨入り前の晴天下、各地から参集した計538人が挑戦しました。

「読書・国語が大好き」

 世田谷区の小学6年の女子児童(12)は、過去2回不合格だった2級に挑戦。付き添ってきた母親(52)によると、女子児童はもともと読書好きで、学校でも国語が大好き。新聞で語検の存在を知って以来、小学校低学年での7級受検からレベルを上げてきたといいます。国語の力をしっかり身に付けさせたいというのが教育方針。「最近は、周りの大人から敬語の間違いなどを注意される機会も減っています」と、日常生活で国語力を鍛える環境が乏しくなっていることを嘆き、「国語の検定は珍しいが、受けることで自信を付けてくれたらいい」と語検の意義を話しました。
 検定を終えて母親と合流した女子児童は、「前回よりはできました」と笑顔を見せてくれました。

「親子で受検」

 葛飾区の公務員女性(51)は、大学1年生の娘さん(18)と親子そろって2級にチャレンジしました。高校3年生のとき大学受験対策で3級を受けた娘さんが、「面白いからまた受ける」と言ったことから、「せっかくなので、私も一緒に受けることにしました」と今回の親子受検の経緯を話してくれました。「普段、日本語をちゃんと使っていないことが分かりましたが、割とできたかもしれない」と娘さん。さらに高みの1級への挑戦については、母親が「取りあえず、今回受かっているかどうかみて、挑戦するか考えたいです」と話してくれました。

「日本語のレベル分かる」

 グアム在住で航空会社勤務の男性(50)は、現地の日本語補習授業校に通う小学4年の女児(9)と同2年の男児(7)を引率して会場に訪れました。グアムの日本語補習授業校では語検受検が必要とされているところ、一時帰国中で現地受検がかなわない代替措置だといいます。女児は6級と7級を、男児は7級をそれぞれ受検しました。「米国の永住権を持っているので、将来日本に戻って暮らすことは基本的に考えていませんが、子どもが日本人の顔をして日本語ができないのはかわいそう。語検は、日本語のレベルが分かるのがよいと思います」と男性は話します。
 受検の感想を子どもたちに聞いたところ、「問題集をやってきたので簡単だった」(女児)、「楽しかった。ちっとも難しくなかったよ」(男児)と元気な答えが返ってきました。

「インター校に通う小学生も」

 新宿区在住の中国籍の会社員男性(42)夫妻は、インターナショナルスクール4年の男児(9)の受検のため来場しました。日本人の知人から語検のことを聞き「日本に住んでいるからには、子どもにもちゃんと日本語ができるようなってほしい」との思いから、初の受検で5級と6級にトライ。「あんまりできなかった」という男児は、午前の6級は早々に途中退席していましたが、親に励まされて、午後の5級は時間ギリギリまで頑張って問題に向き合ったそうです。親子の会話は基本的に中国語ですが、両親とも日本語はペラペラ。きっと君もどんどんできるようになるよ。

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「翻訳に頼らず読み書きしたい」

 5級の会場では、欧州系の男性の姿も見掛けました。ブルガリア出身、葛飾区在住の商社マン(41)で、「話すのは全然大丈夫だけど、読むのができなくて……。パソコン翻訳に頼らず、どこまできるか挑戦したい」と、同僚に勧められて初めて受検したそうです。今回は、「時間が足りなかった」と手応えはいまひとつのようでしたが、「(語検は)仕事には役立つ。また挑戦したい」と前向きに話してくれました。

「漢字が最近出てこなくて……」

 神奈川県川崎市の会社員男性(74)は、初めての受検で4級に挑みました。「最近、新聞を読んでいても、漢字が読めないし、書けない。パソコンばかり使っているせいかもしれないけれど、言葉をしっかり勉強し直したくて来ました」。持ち帰った問題文を手に取材に応じてくれましたが、やや消化不良に終わった様子。特に後半の文章題が難しかったようで「だいたい分かるんだけど、細かいところを聞かれると、抜けている。すぐ出てこない」と話し、早くも次回の検定挑戦に目を向けていました。

「敬語を鍛えたい」

 江戸川区から来た接客業の男性(24)は、初受検で3級にチャレンジ。お客さんに応対する上で、「俺って、敬語全然できてないよな」と自己嫌悪に陥ることがあり、「自分の日本語力を鍛え直したい」と、一念発起して受検したといいます。大きな会場で、知らない人と並んで試験を受けたのは大学受験の模擬試験以来だったそうですが、「日本語と向き合ういい機会になりますね」と、晴れ晴れした表情で話してくれました。

「大学受験で必要」

 初の受検で、志望する大学への入試で必要な3級を受けに来たのは、品川区の高校3年の男子生徒(17)。父親と共に1時間半以上前に会場入りし、直前まで過去問を見るなど受検前はピリピリした様子でしたが、受検後は気さくに取材に応じ、「比較的できました」と手応え十分。2級以上への挑戦については、「今のところ、3級まででいいかなと思います」と答えてくれました。

「人に自慢できるかな」

 同じく3級に挑んだのは、北区のクリエーターの女性(36)。「色彩検定」など一風変わった検定を取るのが好きで、「検定を持っていたら人に自慢できるかなと思って、今回初めて受検しました」という。手応えを聞くと、「難しかった。受かっていたらいいけれど……。また頑張ります」と笑顔を見せてくれました。

「1級の壁に阻まれて」

 台東区から来た不動産会社勤務の男性(48)は、2級と3級を受検しました。前回、1級の壁に阻まれたそうで、「1級は難し過ぎたので、ランクを落として出直した」とのこと。「検定が好きでいろいろなジャンルを受けていますが、語検は、日常生活に広く役立ちますね」と話していました。今回は「そこそこできた」と自信を示した一方で、級の難易度設定ついて「1級と2級は、ちょっと差があり過ぎるね」と指摘していました。

「知らない言葉に出合える」

 1級を何度も受検し、受かった回数も覚えていないという北区の会社員男性(33)は、「今や個人的趣味。知らない言葉に出合えるのがよい」と、語検への熱い思いを訴えていました。その上で、「今回は相当、総合問題のハードルを上げてきている印象ですね」と、難易度を分析。「時間ギリギリまで見直して、書き直したのですが、初めに書いた方が、実は正解だったんです。心が折れそうです」と、試験時間終盤の選択ミスをしきりに悔やんでいました。

「仕事にプラス」

 1級の試験時間終了後、キャンパス内で感想を語り合っていた5人組は、普段SNSでつながっているという、「日本漢字能力検定」(漢検)1級合格者のグループです。

 3カ月前、校閲の仕事に就いたという江東区の男性(24)は、今回6度目の1級受検。過去5回中、3回は認定し、2回は準認定。この日の受検について、「校閲の仕事をするようになって、今回初の受検でしたが、いつもより解答のスピードもついた気がします」と振り返りました。その上で、言葉を吟味する語検は「仕事にプラス。定期に受けたいですね」と話してくれました。

 江戸川区在住の塾講師(算数・数学)の男性(36)は、今回が8度目の1級受検(過去3度認定)。もともと漢字が好きで意味を調べるうち、日本語全般に興味・関心が広がり、保護者や塾生らとの会話でも、正しい言葉遣いを意識しているそうです。「漢検1級は普段絶対使わない漢字の知識が問われますが、語検は普段のコミュニケーションで役立つ知識が満載です」と語検の魅力を語ってくれました。

(時事通信社編集局 吉田忠展)