日本語の総合的な能力を測る「日本語検定」(略称・語検、文部科学省後援事業)の2024(令和6)年度第2回(通算第36回)の試験が、11月8、9日に行われました。国内は47都道府県70カ所の一般会場と、学校や企業などを利用した288カ所の準会場、海外は米国(デトロイト)、イタリア(フィレンツェ)、アイルランド(ダブリン)でも実施され、国内外で計1万6621人が受検しました。国内の最年長は北海道釧路市の96歳男性が4級を受検、最年少は6級に挑戦した東京都福生市の5歳の女児でした。
「語検」は「敬語」「文法」「語彙(ごい)」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6つの領域にわたり、日本語を正しく使えるかどうかを測ります。難易度に応じて1級から7級に分かれており、幅広い年齢層がそれぞれの級の認定の取得に挑戦できます。検定結果は12月上旬に公式ホームページに速報を掲載後、12月中旬、個別に郵送で受検者に通知します。
東京会場、839人が挑戦
東京23区の一般会場は、上智大学四谷キャンパス(東京都千代田区)。すっきりとした秋晴れが広がった週末、839人が挑戦しました。
「苦手な国語、克服のきっかけに」
東京都足立区の小学4年生男児(10)は、会社員の母親(40代)に付き添われて来場し、6級を受けました。ロビーで待つ母親に聞いたところ、男児は小2で7級に合格して以来、2度目の語検。「学校では、国語があまり得意でないのですが、級を上げることで少しでも自信を付けてくれたらいい」と、購読している読売KODOMO新聞の広告を見て、わが子に受検を勧めたそうです。
受検後に母親と合流した男児は、「漢字が一つできなかったけど、他は自信がある。また(上の級を)受けたい」と元気に話していました。
「リメディアル教育にも役立つ」
小3男児(9)の受検のため会場を訪れたのは、大学で数学を教える男性講師(38)=江戸川区=。男児は今年6月に初受検で7級に受かり、得点上位者としての表彰も受け、一つ上の6級に挑戦しました。ただ、今回は準備不足で、「本人は、やめるとか行かないとか言っていた」と気持ちが乗らないままの受検となったそうです。
待っている間に男性講師に語検の意義について見解を聞くと、「大学で数学を教えていても、日本語の読解力不足を感じることがあり、読解力が足りない学生にとっても文章を理解する力を付ける必要を感じています。この検定はリメディアル教育(学び直し)にも大いに役立つと思います」と話してくれました。
「きょうだいで挑戦」
新宿区在住の中国籍の会社員(43)は妻と共に、インターナショナルスクール4年の男児(10)と、1年の女児(7)のきょうだいを引率。男児は半年前の6級に続く2度目で、4級と5級を受検、女児は初めて7級に挑みました。「インターナショナルスクールでは、日本語のレベルが分からないから、日本語の『はかり』が欲しい」というのが子どもを受検させた動機だそう。「(4~7級に設定されている)50分という受検時間が子どもにはちょうどいい」とも話し、「テキストも全冊買って準備してきました」とリュックの中身を見せてくれました。
受検会場から出てきた男児は「4級は全然駄目だったけど、5級は易しいと思った。集中してできた」と胸を張りました。女児も「あんまり難しくなかった。全然緊張しなかった」と笑顔で話しました。
「形に残る検定で、中学受験準備」
母親=目黒区の主婦(54)=に連れられて初めて受検したのは、小6の女児(12)。昼食を挟んで6級と5級を連続して受けました。女児は「ハリー・ポッター」などの読書が大好き。母親は、「中学受験を考えているのですが、本人が(資格や級など)形に残るものが好きなので、力試しのため受検させました」と話します。5級の受検を終えた女児は「最初はちょっと緊張したけど、簡単だった。3回見直したので自信はあります」と語ってくれました。
「会社が薦める検定に興味持てなくて」
建設関連の会社に勤める目黒区の女性(45)は初めての受検で3級に挑戦しました。会社から何か資格を取るように指示されたのですが、「会社が薦めるリストは興味が持てないものばっかりだったので、自分で探しました」とのこと。「社外にメールを送ったり、書類チェックを任されたりすることが多い私にとっては、日本語を勉強するのが大事」と自分なりの語検の意義づけを話しました。
受検後手応えを聞いたところ、「とりあえず書きましたが…。落ちていたらまた受けます。受かるまでやらなければいけないので」と次を見据えていました。
「来日20年、日本語レベルアップへ」
同じく初受検で3級を受けたのはボリビア出身の会社員男性(41)=新宿区=。21歳で来日して20年。ただ、「友達が来日2~3年で同じくらいに日本語を話しているのを聞くと、自分はもっとレベルアップしないといけない」と受検の動機を教えてくれました。
「大学の単位に直結」
3級の会場から出てきた女性グループにも話を聞きました。いずれも立正大学の法学部1年生の3人組で、大学の単位に直結する大事な受検だったそうです。そのうちの一人、大田区在住女性(19)は、「敬語や手紙の書き方など、役立つ知識を問う問題が多かったです」と振り返り、「過去問とかもやってきたので、できました。受かっていると思います」と手応えを話しました。
「ビジネスに使える」
台東区から来た夫婦は初めての語検でそろって2級に挑みました。保険会社勤務の妻(56)が、商工会議所のチラシで語検の存在を知り、自動車メーカー勤務の夫(52)を誘って申し込んだとのこと。妻は「今の自分の日本語の力が分かるので、受けてとてもよかった。手応えは悪くありません」と笑顔。夫は「漢字は、分かっているつもりでも書けない。これほどできないとは思わなかった」と自分のふがいなさを嘆きつつも、「言葉遣いは勉強になった。試験で試されるというのはとってもよい。(語検は)ビジネスに普通に使えます」と前向きに話してくれました。
「知らない用法との出合い、刺激に」
千葉県在住で出版社の編集部で記事校正などの仕事をしている男性(30)は、過去何度も1級に受かっている1級受検の常連さんです。前回、6月の受検は惜しくも「準認定」だったそうですが、「今回の問題は、割と選択肢が絞りやすかったです」と手応え十分の様子。毎回、「過去の答案を見直して検定に臨んでいる」と、検定への向き合い方も筋金入りのようです。
合格しても繰り返し参加している理由を聞くと、「ゲーム感覚で、まずは決められている合格点に届くというのがうれしいんです」と前置きした上で、「普段、仕事で分からない言葉に出合うと、すぐ辞書を引きますが、試験では、終わってからあの言葉はどういう意味だったのかなと意識に残ってすごく刺激になる。この検定で初めて知る用法も多く、良い経験になります」と、日本語の新たな発見の場としての意味合いを強調していました。
(時事通信社編集局 吉田忠展)