日本語検定 2級受検のおすすめ理由と学習方法
日本語検定公認講師
服部 麻友美
1. 日本語検定2級受検を、このような方におすすめします
「日本語検定」2級の受検を考えられる方は、「3級を既に取得し、2級にも挑戦してみよう!」という方と、「日本語検定2級に初めて挑戦しよう!」という方と、大きく2つに分かれるのではないかと思います。
3級を取得済みの方には繰り返しの話になってしまいますが、基本的に「日本語の総合力を測る」という考え方、【敬語・文法・語彙・言葉の意味・表記・漢字】の6つの領域に加え、【総合問題】で、文章読解力などを測る点は変わりません。3級と2級のレベルの違いは、「高校卒業・社会人基礎レベル」なのに対し、2級は「大学卒業・社会人中級レベル」である点です。全体の得点率が70%以上で【2級認定】となります。
試験基準も「大学生生活からビジネスまで、社会生活一般に必要な語彙や言い回しを幅広く習得し、口頭と文章の両面において、場面に応じた適切かつ的確な表現や、論理的な表現ができる。」「常用外の漢字の知識も豊富で、新聞の社説、自分の専門分野に関する学術論文など、高度な内容の文章を理解することができる。」と、3級に比べて一気に難しくなっております。このような内容から、企業の中にも、採用試験の際に2級を取得していることで優遇する場合があります。
私も、普段指導している学生たちに2級の内容について聞かれると、次のように答えております。「3級に比べ、敬語を使い慣れている、または詳しく知っている、そして難しい四字熟語や漢字にも挑戦する意気込みで、努力してください。3級と比べて大変難しくなります。」
たとえば、過去に以下の下線部のような問題が出題されております。
(父親を亡くした方に対して)「このたびはお
力
落としのことと存じます。」
「お招きにあずかり、嬉しく思います。」
「こちらの名産の果物をお送りします。どうぞご
笑納
ください。」
「今日で会社員生活ともお別れかと思ったら、入社以来のさまざまな出来事が脳裏を
去来
した。」
社会人の方には耳慣れた言葉かもしれませんが、学生の方ですと、小説でこのような言葉を見たり、周りで使ったりする方がいないと、驚いてしまうかもしれません。
ですので、日本語検定2級は、以下のような方に受検をおすすめします。
2. 日本語検定2級の学習方法
1.で書きました通り、日本語検定2級は、【敬語・文法・語彙・言葉の意味・表記・漢字】の各領域と【総合問題】が出題されます。全体の得点率が70%以上で【2級認定】となります。このうち、【表記・漢字】で必ず、【総合問題】でも手書き問題が出題される場合があります。他の問題は概ね選択問題です。
3級と同様に、問題の出題傾向を知るためには、『日本語検定 公式過去問題集 2級』を使用されると便利です。昨年度の問題が2回分、そのまま掲載されておりますので、時間を測って問題を解くことをおすすめします。これでは練習が足りない、と思われる方は、『日本語検定 公式練習問題集 2級』を使うと良いと思います。領域ごとに問題が掲載されておりますので、自分の苦手分野を繰り返し学習できます。
【語彙・言葉の意味・表記・漢字】に関しても、3級と同様に『日本語検定必修単語集 2級』を使用することが合格への近道です。手書き問題では、3級と同様に、同音異義語が5問程度、また、2級では、たとえば「朦朧」などの常用漢字外の漢字の読みも5問出題されます。
なお、『日本語検定必修単語集 2級』にも掲載されておりますが、ビジネスの場などで広く使われるカタカナ語の意味も出題されます。また、数詞も出題されることがありますので、たとえば「棹」(箪笥、羊羹など)、「膳」(お箸など)等の、物の数え方も確認されると良いと思います。
なお、【敬語】【文法】に関しては、問題集に解説もついておりますが、3級と同様に基礎から学習したい場合、長らく日本語検定の審議委員を務められた、梶原しげる氏の書籍をおすすめします。『敬語力の基本 肝心なところは、だれも教えてくれない72のテクニック』(日本実業出版社・電子版あり)
また、日本語検定委員会研究主幹を務められた、川本信幹氏のWEB連載「その日本語、相手を不快にします」もおすすめします。連載は古いものが下に載っておりますので、下から順に読まれると良いと思います。
現代の敬語は、2007年に基準が定められております。その際、「まもなく2番線に電車がまいります。」「そのことは存じております。」などが、「謙譲語Ⅱ」(丁重語)として項目が立てられました。これは「自分側の行為、ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの」です。この種類の敬語は、2007年以前には説明がされておりませんでしたので、私もこの年以前に社会人になった方から、何度か「『タクシーがまいります。』という敬語は、誰に対してのものなのでしょうか。」と尋ねられたことがあります。敬語に関しては、文化庁が「敬語の指針」として公開しておりますので、詳しく確認なさりたい方は、こちらをご参照ください。
【総合問題】は、文章読解力が主に問われる内容です。新聞の社説、長い記事などを読み、要点を正しく理解出来ていれば良いと思います。3級では文章問題が2題の出題でしたが、2級は長い文章問題と短い文章問題の複数が出題されます。言葉の意味も同時に出題されることもありますが、3級と同様に、必修単語集で学習していれば問題ありません。
日本語検定2級に合格できる実力の方は、「日常生活で、ご自分の敬語や語彙力は一定の水準に達しており、周囲の方にも敬語や適切な語彙選び等でアドバイスができる」かと思います。ぜひ日本語検定2級を取得なさって、今までと違う自信と気付きを得た、日常生活を過ごされてみてはいかがでしょうか。
服部 麻友美(はっとり まゆみ)
日本語検定公認講師
学習院大学人文科学研究科日本語日本文学専攻博士前期課程修了。(修士)
中学校・高等学校国語科専修免許取得。
日本語検定1級取得、日本語検定公認講師。
指導学生の団体表彰受賞回数、約10回。
中学校・高等学校国語科教員としてのキャリアを土台に、専門学校・大学等で日本語検定に関する科目、文章表現に関する科目などを指導する。
日本語検定公認講師として、企業での研修講師も務める。