2025(令和7)年度第2回(通算第38回)の試験が、11月7、8日に行われました。国内は47都道府県69カ所の一般会場と、学校や企業などを利用した243カ所の準会場、海外は米国(グアム)、イタリア(フィレンツェ)、アイルランド(ダブリン)でも実施され、国内外で計14,570人(延べ人数)が受検しました。最年長は横浜市の93歳女性で2級を受検、最年少は7級に挑戦した茨城県守谷市の4歳の幼児でした。

 「語検」は「敬語」「文法」「語彙(ごい)」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6つの領域にわたり、日本語を正しく使えるかどうかを測ります。難易度に応じて1級から7級に分かれており、幅広い年齢層がそれぞれの級の認定取得に挑戦できます。検定結果は12月上旬に公式ホームぺージに速報を掲載後、同月中旬、個別に郵送で受検者に通知します。

東京会場、926人が挑戦

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 東京23区の一般会場は、上智大学四谷キャンパス(東京都千代田区)。ひんやり秋晴れとなった試験当日の8日、午前(2、4、6級)と午後(1、3、5、7級)で計926人(延べ人数)が挑戦しました。

ビジネススキルアップを期待

 午前中の試験開始まで1時間を切った頃、かばんから語検の問題集をのぞかせて自身の検定教室を探していたのは、30代の女性2人組。いずれも初の語検で2級を受けるというのできっかけを聞くと「仕事に生きる検定はないかとネットなどで調べて申し込みました」(36歳、埼玉県)とのこと。「企業の求人原稿などを書いているので、正しい日本語の文章を書けるよう…」(同)と、ビジネスのスキルアップを大いに期待している様子です。同僚の女性(39歳、渋谷区)からも「本を買って勉強してきました」と頼もしい答えが返ってきました。

 マスコミに勤める56歳の男性(新宿区)も、初めての受検で2級に挑戦。「たまに、二重敬語(一つの単語に同じ種類の敬語を重ねる不自然な用法)を使ってしまうこともあって、恥ずかしいので、日本語のリスキリングです」と動機を話してくれました。

 この方からは終了後も取材。「難しい問題もありましたが、事前に『必修単語集』で勉強していたため、何とか答えられました。記述式問題もよく読めば答えられた」と手応え十分で、「次はさらに上級の試験にチャレンジしたい」と、1級受検も視野に入れているようでした。

語検受かれば、就職試験で1次免除に

 同じく2級受検を終えて足取り軽く出てきたのは、21歳の大学3年の女性。就職を志望する企業の募集要項で1次試験の筆記が免除される資格のリストに語検があったそうで、「日本語は大好きで過去問の手応えもいい感じなので申し込みました」と初受検の経緯を語り、結果を聞くと、「割と出来ました」と明るく答えてくれました。

「娘の合格に触発されて」

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 受検者の背景はさまざまで、必ずしもスキルの向上が狙いという人ばかりではありません。初受検で2級を受けた71歳の配達員男性(墨田区)の受検動機は「娘と同じレベルの認定を受けたい」というもの。30代の娘さんが昨年2級に準合格、今年春に見事2級合格を果たしたのに触発され一念発起しました。

 試験後、出来映えを聞くと、「時間がありませんでした。最後の長文が読み切れず、全体では半分ぐらいかな。でも、久しぶりにいい緊張感を味わいました」と笑顔を見せてくれました。

若年層は子ども新聞や塾パンフで存在知る

 検定の真っ最中は、検定教室の近くでわが子を待つ保護者に話を聞きます。

 6級で初受検という小学4年生の女児(9)の付き添って来た会社員女性(49歳、板橋区)は「もともと国語が得意で、本を読むのが好きな子で、(購読している)子ども新聞を見て、『こんなの載ってる。受けたい』と本人が言い出した」と受検の経緯を話します。

 「塾からパンフレットをもらってきて、勧めたら本人が受けたいと言いました」と話すのは、同じく6級で初受検の4年生女児を待つ介護士男性(51、墨田区)。「娘は、こういう形で学校の外で試験を受けた経験がないので、検定の中身どうこうよりまずは経験させてみたかった」と、子どもの今後の成長に期待を膨らませます。

生真面目に隔年でステップアップ

 品川区から来た主婦(49)は、語検2回目で6級に挑んだ4年生男児の付き添いです。男児の1回目の受検は2年生当時の7級。購読している読売KODOMO新聞を見て申し込み、満点で合格して読売新聞社賞の盾をもらったとのことです。

 その受検から2年のブランクが生じたのは「6級は4年生相当と書いてあるから、4年になって受ける」という、小学生らしい?生真面目さゆえ。満を持しての6級受検を終えた感想を本人に聞くと「全部できました。満点かもしれません」と堂々と答えてくれました。

中学受験に向け弾み

 世田谷区の主婦(44)は、2回目の受検で4級に挑む6年生の娘を引率。娘さんは、親が驚くほど読書が好きな“本の虫”。「どれぐらい内容を理解しているのか、日本語の力を測る検定がないかと調べて見つけたのが、日本人のための日本語検定でした。本人もすごく楽しかったようで、次も受けたいと挑戦しました」と、昨年秋の初受検(5級合格)からの経緯を説明してくれました。今回受検した4級は中学校卒業レベル。準備中という来年2月の中学受験に向けても大いに弾みがついたことでしょう。

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3級が大学入試の推薦要件

 午後の試験は1時30分からで、その15分前には試験監督の説明が始まります。説明開始ぎりぎりに3級の会場を探していたのは、世田谷区の高校2年の女性(17)と自営業の母親(49)。娘の入室を見届けほっとしている母親に話を聞きました。

 娘さんの受検は今年春に続き2回目で、春は3級準認定でしたが、「大学の推薦要件の一つに語検3級以上というのがあって、何としても3級に合格しておきたい」とのこと。土曜日でも制服姿の理由を聞くと「土曜も学校があるんです。だから、きょうはホームルームが終わってすぐに飛び出して来たんです。検定が日曜だったら慌てなくていいんですけど」と、語検の開催日程に関する要望も口にしていました。

きょうだいで語検ファン

 試験が始まってからは、子どもの受検に付き添う保護者が取材対象になります。

 世田谷区の40代の主婦は、5年生の女児を引率。女児は以前に7級、6級は合格済みで、今回が3度目の受検で5級を受けました。「今は中学に上がって学校の勉強が忙しくなってしまいましたが、2学年上の子もいて、ずっときょうだいで受検していました」と、上の子に刺激を受け、徐々に級を上げていることを説明。「本好き、国語好きで、これまで楽しんで勉強してきましたが、5級は敬語が難しいようですね」と実学年より先に小学校卒業レベルに果敢に挑むわが子を思いやっていました。

 西東京市から来た主婦(35)は、小学2年生の男児(8歳)の試験終了を待ちます。男児は初めての受検で7級に挑戦。「読売KODOMO新聞の広告を見て『受けてみる?』と勧めて、本人は『別に(どうでもいい)』という感じでしたが、申し込むと1回分の過去問題が届き、解いてみたらできたので『やる』と言ってくれました」とのこと。

 試験後本人に感想を聞くと、「ちょっと難しい問題もあったけど、知ってる問題もあった。面白かった」とはにかみながら答えてくれました。

留学生にも広がる受検の輪

 語検は、各級とも検定開始30分後から途中退出が可能となります。

 5級の教室から早々に退出してきた女性に声を掛けみたところ、彼女は中国出身の大学生3年生(25、北区)で、「日本に4年間住んでいる」とのこと。流ちょうな日本語で、「外国から来ている友だちはみんな受けているので」と彼女が通う大学で受検の輪が広がっていること説明し、本日の手応えを聞くと「できたと思います」と自信を見せてくれました。

若者がたくさん受けるべき

 1級の教室から途中退出してきたのは、世田谷区から来た無職男性(81)。読売新聞の広告を見て、今回初めての受検で2級と1級ダブルで受検したといいます。「2級は大体できたけど、1級は本当に難しかった。四字熟語なんて解けたのはたった1問だけだよ」と、歯応えのある問題に跳ね返された様子。語検の社会的に意義を聞くと、「社会生活で絶対役立つね。特に敬語なんかは使い方を学ぶといい。もっと若者がたくさん受けたらいいんじゃない」と、若年層への正しい日本語の浸透に期待を寄せていました。

日本語学専攻視野の学生も

 一方で、今回の取材では、こうしたシニア世代の期待に応える若い受検者からも話を聞くことができました。

 「書店でたまたまテキスト見つけて受検を受けるようになりました」という府中市在住の大学2年の女性(20)は、この春初受検で2級に受かり、今回1級に初挑戦。「日本語が本当に好きで、大学で日本語学を専攻しようと思っています」と、言葉への熱い思いを語ります。将来に向けては、「教育にまつわるところに就職したい」と夢を語るとともに、「(今回の検定でも)知らない言葉がたくさんあった。これからもっと勉強したいです」と、さらなる精進を誓っていました。

コロナ禍経て4年ぶり挑戦

 調布市から来た塾講師兼教室長の男性(27)は、コロナ禍を経て4年ぶり2回目の1級挑戦。「何か誇れる資格が欲しい」というのが受検の動機で、日本語関係の検定を調べて語検にたどり着いたと言います。今回は「知らない言葉がたくさんあって、厳しいかもしれませんが、機会があればまた受けたいですね」と話してくれました。

「推し」と同じ1級取りたい

 中学校の国語、高校の国語の教員免許を持つアイドル寺嶋由芙さんの大ファンで、彼女と同じ1級を取りたいと、受検を続けている印刷会社勤務の男性(53、練馬区)からも話を聞きました。寺嶋さんは2022年秋に1級、2級を受けいずれも合格。語検の機関誌「ごけん」にも寄稿しています。男性は「寺嶋さんがSNSで1級に一発で合格したことを書いていたのを見て、『推し』と同じ資格を取りたいと、挑み続けている」と言います。今回で6回目の1級挑戦で、過去には準認定を受けたこともあるとのこと。アイドルへの思い入れが受検動機ではありますが、「語検に挑み始めて、敬語とか言葉の使い方に注意するようなりました。メールを書くときに、いろいろな意味にとれてしまう文章は書かないようにするとかね」と話し、自身の日本語活用練度の向上も実感しているようでした。

(時事通信社総合メディア局 吉田忠展)