オンラインを活用したコミュニケーションで明らかになった日本語力の必要性

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株式会社ANA総合研究所

客員研究員

若田 加寿子

 新型コロナウィルスの拡大により、私達の生活は大きく変化し、社会生活や働き方、そして価値観にも、大きな影響を及ぼしています。テレワークが進み、会議も授業も「オンラインで」が可能となり、オンライン飲み会が中高年にまで急速に浸透したことは驚きでした。最初は戸惑いもありましたが、慣れるにつれてメリットがあることもわかり、これからもこの様式は、進化を続けるだろうと期待をしています。しかし、その一方で、実際に顔を合わせずに、コミュニケーションを取るには、思っている以上に真意が伝わらないことも多く、それなりの努力と工夫も必要ですし、何より日本語力が必要だと実感しています。

 対面授業ができなくなり、オンライン授業を初めて経験し、今まで以上にメールやレポートを読む機会が増えました。学生達は、丁寧過ぎて二重敬語になったり、簡潔に言おうとして体言止めになったり、ストレート過ぎる表現で教員を落胆させることも少なくありません。教員も、婉曲的な表現では微妙なニュアンスが伝わらないとか、諺を例に出しても通じないなど、以前にも増して、苦労をしています。

 私は丁寧な英語表現を大学で教えていますが、英語には敬語がないという固定観念があるためか、お客様や上司への丁寧な英語表現には、苦戦する学生が多くいます。英語にも相手の気持ちを慮った表現があり、日本語と同じように、意味は同じでも微妙なニュアンスが異なり、使い方を間違えると相手を見下してしまう恐れのある言葉もあります。日頃から適切な敬語を使い、美しい日本語を使うことの出来る学生は、丁寧な英語表現も同様に出来ています。やはり、語学力向上のためには、まず日本語力が土台であることを実感しています。

 就職活動もオンライン面接が主流となりましたが、従来の対面面接の時と変わらずコミュニケーション能力があるかどうかの見極めは重要なポイントです。自分の言葉で思いを正確に伝えることができる力は、社会人にも必須の力です。今後さらに、オンラインでのコミュニケーションが主流となる時代には、より高度なレベルを求められますが、そのためには、確かな日本語力をベースとして身につけておくことが必要ではないでしょうか。


 確かな日本語力とは、敬語や漢字だけで測るものではありません。日本語検定では、これらに加えて文法、語彙、表記、言葉の意味など6 つの領域から幅広く出題され、ご自身の強味、弱みを知ることができ、日本語力を確認することができます。まずは、自分を知ることから始めてはいかかでしょうか?

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若田 加寿子(わかた かずこ)

全日本空輸株式会社に客室乗務員として入社。その後、教官や管理職として、客室乗務員の育成、部門の品質向上に携わり、(株)ANA 総合研究所に出向。京都産業大学外国語学部 特定任用教授を経て、現在は女子大学にて非常勤講師としてエアラインにおけるホスピタリティを教えている。日本語検定委員会の審議委員。
共編著に「航空とホスピタリティ」NTT 出版株式会社