1月8日朝、いつものように寝ぼけ眼でスマートフォンを手に取りました。すると、あるニュースの見出しが目に飛び込んできました。
その瞬間の私に吹き出しをつけるとしたら、まさに「?」「!」の状態。すぐさま記事を開き、どのような内容なのか確認しました。
記事を要約します。
驚いたのは、70年も同じルールで運用されていたこと。言葉は時代とともに変化していくものです。そのため、数多ある日本語に関する辞書も10年に1回ほどのペースで改訂されていますし、マスコミで使用されている言葉のハンドブックも同様に見直されます。言葉の意味や用法が変わっているのであれば、文章の書き方が変化していることは必至です。特にこの数年ではTwitterやInstagramなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上で公式発表が行われるなど、媒体や手段も多様化しています。昭和から平成を飛び越え、令和の改革。公用文についての考え方やルールではありますが、私たちが日常生活の中で文章を書くときのヒントになりそうなことがたくさん記載されていました。わかりやすい文章を書くコツや読む人の気持ちを考えた文章を書くための心構えなど、一読の価値あり! ですよ。
文化庁「公用文作成の考え方」(建議)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93651301_01.pdf
かくいう私も、言葉に関わる仕事をしてまもなく丸13年を迎えます。人に「伝わる」伝え方を追求していますが、これが本当に難しい。生放送や収録のあとは、「もっとこう言えばよかった!」「この言葉のほうが適切だった!」と、ひとり反省会を行っています。今まで「完ぺきだった!」という放送は一度もありませんし、きっとこれからもないでしょう。それほど言葉は奥深いものであり、伝える対象が広ければ広いほど、様々な困難が生じます。
「話す」ことに加えて、最近では「書く」ことも増えてきました。このコラムも、そのひとつ。毎回、うんうん唸りながら、パソコンのキーボードを叩いています。
このコラムも、そのひとつ。毎回、うんうん唸りながら、パソコンのキーボードを叩いています。
まさに、この部分を打つだけでも、かなり悩みました。
まずは「ひとつ」の表記の仕方。ひらがなにするのか、漢数字か算用数字を混ぜるのか。これだけでも、印象が違いますよね。小学校の国語の授業で「縦書きの場合は漢数字、横書きの場合は数字」と教わった記憶がぼんやりとありますが、みなさんはどうでしょうか?
文化庁「公用文作成の考え方」(建議)p.3「I 表記の原則」で、以下のように示されています。
このルールに基づくと「一つ」がより規範的な表記であると言えます。それでもあえて、私が「ひとつ」とひらがな表記にしたのには、自分なりに理由があります。
基本的なルールをきちんと理解したうえで、どのように表現するのか。自分らしさとわかりやすさを念頭に置いて、書くようにしています。
続いては、こちら!
毎回、うんうん唸りながら、パソコンのキーボードを叩いています。
この一文も、「うんうん」を「ウンウン」とカタカナ表記にするのか悩みました。「唸る」を「うなる」とひらがな表記にする場合は、「ウンウン」のほうが読みやすいだろうし……。
たった7音のフレーズを文字にするだけで、4パターンの表記があるのです。ひらがな、漢字、カタカナ。3つも表記がある日本語って、本当に難しい……。
このコラムをはじめ、ブログやSNSなどで文章を書くときに大切にしていることは、2つあります。まずは、パッとひと目見たときに「読みたい!」と思ってもらえるようにすること。そして、どんな人が読んでもまっすぐ伝わるような言葉を選ぶこと。「わかりやすさ」と「親しみやすさ」がポイントです。なんでもかんでも漢字に変換してしまうと、かえって読みづらくなることもあるし、「ウッ……」と威圧感を与える場合もあります。かたい印象に見せたい場合や毅然とした態度を表したい場合は、密かに漢字を多めにしているのは、ここだけの話。また、難しい言葉や馴染みのない言葉は極力使わず、わかりやすい言葉をチョイスすることも心がけることで、より多くの方に伝わることを目指しています。もちろん、例外もあります。数年前、大学院で修士論文を執筆していたときは、日常会話のなかで使わないようなフレーズをふんだんに使って仕上げました。論文を書くうえでの「お作法」があるためです。いつ、どこで、誰に、何を、どのように伝えるかによって、話し方や書き方、使う言葉は自然と変わるもの。その根底には、伝える相手への想いをお忘れなく!
上田まりえ
タレント、日本語検定委員会 審議委員
1986年9月29日、鳥取県境港市生まれ。2009年、専修大学文学部日本語日本文学科卒業後、日本テレビにアナウンサーとして入社。2016年1月末に退社し、タレントに転身。現在は、タレント、ラジオパーソナリティ、ナレーター、MC、スポーツキャスター、ライターなど幅広く活動中。また、アナウンススクールとSNS・セルフプロデュースについての講師も務める。2019年、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程1年制コース修了。
2021年7月14日には「知らなきゃ恥ずかしい!? 日本語ドリル」(祥伝社黄金文庫)を上梓。