上田まりえ「ことばのキャッチボール」

 1月も半ばを過ぎ、2023年も日常になりつつあります。みなさま、2023 年のスタートは、どのようなものになりましたか? 私はといいますと、未だかつてないほど最高のスタートを切ることができました!

 こちらのコラムの中では初めてお伝えしますが、私は「野球と結婚して“野球まりえ”になりたい!」と真剣に思っているほど、中学生の頃から野球を愛しています。ありがたいご縁をいただき、元メジャーリーガー・上原浩治さんのYouTubeチャンネル『上原浩治の雑談魂』のアシスタントを務めて、まもなく丸3年。昨年、チャンネル登録者数が55万人を突破し、その記念企画として、先月、アメリカはニューヨークに行ってきました! 目的は、あの松井秀喜さんにお会いすること。日本食レストランの一室で、3時間以上にわたる“雑談”をしました。その模様は、お正月から配信されているので、ぜひご覧ください。

 ニューヨークを後にした私は帰国せず、フロリダに移動。上原さんの奥様から「せっかくだから遊びにおいでよ!」と声をかけていただき、12月中旬までの一週間を上原家で過ごしました。スーパーマーケットやホームセンターに行って買い物をしたり、ワンちゃんのお散歩に行ったり、一家行きつけのレストランに連れて行ってもらったり、ご近所さん(アメリカ人のご夫婦)との食事会にも同席させてもらったりと、現地の生活にたくさん触れることができました。

 そのなかで驚いたのが、アメリカのみなさんの「Hi!」から始まるコミュニケーション。道ですれ違う人や店員さんなど、誰とでも自然に会話が広がり、笑顔が生まれることに感動しました。18歳まで鳥取県境港市で過ごした私にとって、近所の人に限らず、道ですれ違う人にあいさつをするのは当たり前のことでした。そのときの感覚に似ていて、うれしい気持ちになったのと同時に、「あぁ、やっぱり私は人が好きなんだ!」と実感しました。

 しかし、私の英語力は、最低限の日常会話ができるレベル……。相手が話していることを、きちんと理解したい。話したいのに、うまくことばが出てこないことが悔しい。話すことや伝えることを生業にしている私にとって、これほどもどかしいことはありません。

 伝えたいと思っていることを英語に変換して伝えようとするとき、どの単語を使えばいいのか、どの表現が適切なのか、本当に一生懸命考えました。そのときの私の頭の中では、ことばのタンスの引き出しを開けたり、閉めたり、時にひっくり返してぐちゃぐちゃに散らかしてみたりと、てんやわんやの状態でした。しかし、不思議なもので、奥底に眠っているものを取り出すことができたり、建て付けが悪いからと諦めていた引き出しが開いたり、不思議と探していた言葉が見つかるんですよね。錆び付いていたものが、磨かれていくような感覚もありました。

 母語、すなわち、日本語で話すとき、みなさんは頭の中の「ことばの引き出し」を開け閉めしていますか? 私はアナウンサーになったとき、それまでの22年の人生を悔やみました。「なんて楽をして話していたのだろう……!」と。プライベートの時間、特に家族や友人、恋人などの親しい間柄の人と話すとき、人は会話の内容に注力することはあっても、ことばについてはあまり考えない傾向にあると思います。一方で、面接やプレゼン、プロポーズなど、人生を賭けて人に何かを伝えたいシーンを思い浮かべてみてください。きっと、「どのことばを使えば、相手により伝わるのだろうか?」とか、「今の敬語、間違っていなかったかな?」とか、普段は悩まないことで悩んだり、不安になったり、緊張する人が多いと思います。大切なのは、日頃からことばについて考えながら話す習慣作り。そして、相手に「届けたい!」という気持ちです。「伝わればいいじゃん!」ではなく、「伝えたい」「伝わりますように」と思えば、ことばと心のキャッチボールは素晴らしいものになると信じています。

 上原浩治さんをはじめ、一流と言われるプロ野球選手たちは皆、口を揃えてキャッチボールの大切さを説きます。自分が気持ちよく投げるだけではダメ。狙ったところに投げること、また相手がキャッチしやすいように考えて投げることが、制球力アップへの近道なのだそうです。野球のキャッチボールも会話のキャッチボールも、「届けたい」という気持ちと届けるための努力が大切なのだと思います。

 2023年は、英語を猛勉強することに決めました! 英語で会話のキャッチボールをリズムよくできるようになることが目標です。トムさん、ルーベンさん、キャシーさん……アメリカで出会ったみんなを驚かせてやるんだから!!

 もちろん、伝え手として、日本語検定委員会審議委員として、日本語への深い理解も追い求め続けます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

上田まりえ

タレント、日本語検定委員会 審議委員

1986年9月29日、鳥取県境港市生まれ。2009年、専修大学文学部日本語日本文学科卒業後、日本テレビにアナウンサーとして入社。2016年1月末に退社し、タレントに転身。現在は、タレント、ラジオパーソナリティ、ナレーター、MC、スポーツキャスター、ライターなど幅広く活動中。また、アナウンススクールとSNS・セルフプロデュースについての講師も務める。2019年、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程1年制コース修了。
2021年7月14日には「知らなきゃ恥ずかしい!? 日本語ドリル」(祥伝社黄金文庫)を上梓。

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