上田まりえ「ことばのキャッチボール」

先日、弟のように可愛がっている高校生の男の子から、近況報告のメールが届きました。勉強や部活動のことなど、学校生活について綴られている文面からは充実した様子が伝わり、読みながら自然と笑みがこぼれます。しかし、最後の一文を目にした瞬間、その表情は一変しました。

「一様 伝えておきますね!」

い、一様…!? スマートフォンから届いているので、タイピングミスではなさそう。まさかと思い、SNSの検索機能を使って調べてみると、同じような間違いがたくさん出てくるではありませんか!

「一様 本人です!」
「一様 写真の顔は隠しておきますね!」
「一様 プロフィールにリンクを貼っておきます!」

そういえば、TikTok「上田まりえの日本語教室」にも、次のような質問が届いていました。

「一応(いちおう)」と「一様(いちよう)」よく意味がわかりません。どういうときにどちらを使ったらいいのか教えてください。

正直なところ、冗談や冷やかしの類だと思い、放置していたのです(後日、動画を作成し、投稿しました。)

一連の出来事を周囲に話したところ、皆一様に驚いていました。
そう、これが「一様」の正しい使い方ですよね。

一応 とりあえず、ひとまず ※本来の表記は「一往」
一様 すべて同じ様子であること

なぜこのような間違いが起こっているのか、私の推察は次の通りです。

  1. 「いちおう」を「いちよう」と発音している人が多く、間違って覚えてしまう。
  2. パソコンやスマートフォンなどで「いちよう」と入力すると「一様」に変換されるため、間違っていることを認識できない。
  3. 「一応」は話し言葉であるため、文字にする機会が少ない。
  4. 発音を間違っていても、他人に気づかれにくい。

文字を書く機会が減ってきていることに加え、手軽にメッセージを送信できるSNSが発達してきたことも、影響しているのかもしれません。

いずれにせよ、意味の違いをわかっていれば、避けられる間違いです。「雰囲気」を「ふいんき」と発音するのとは、訳が違います。「こんな間違いをするなんて!」とはねのけるのではなく、深刻な問題として捉える必要がありそうです。

この他にも、目が点になるような言葉の間違いはたくさんあります! 信じられない間違いシリーズ、まだまだ続きます。

上田まりえ

タレント、日本語検定委員会 審議委員

1986年9月29日、鳥取県境港市生まれ。2009年、専修大学文学部日本語日本文学科卒業後、日本テレビにアナウンサーとして入社。2016年1月末に退社し、タレントに転身。現在は、タレント、ラジオパーソナリティ、ナレーター、MC、スポーツキャスター、ライターなど幅広く活動中。また、アナウンススクールとSNS・セルフプロデュースについての講師も務める。2019年、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程1年制コース修了。
2021年7月14日には「知らなきゃ恥ずかしい!? 日本語ドリル」(祥伝社黄金文庫)を上梓。