その日本語、相手を不快にします

ある企業の総合研究所の方から、次のようなコピーを見せられたことがあります。

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営業一課から提出された稟議書のAプロジェクトと営業二課から提出された稟議書のBプロジェクトとの関係性が明確でないので、総務課としては、取締役会で検討の上最終的な判断を示していただきたいと思量します。

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私が目を通すのを待って、その方は「先生、この文書にはどこかおかしいところがありますか」と質問されました。以下、私とのやり取り。

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「言葉遣いとしておかしいのは『関係性』でしょうね」

「はあ、やはりそうですか」

「とおっしゃると」

「実は、私の友人が、この文書の作成者で、部長に見せたら、言葉遣いにおかしいところがあると叱責され、どこかと聞いたら、自分で考えてみろと言われたと言うのです」

「それはまた、頼もしい上司ですね。日本語検定一級クラスですよ。それでそのお友だちはどう処理したんですか」

「自分では判断しかねて、この文書をファックスで私に送ってきて、知恵を貸せと言うんです」

「その方は、『関係性』が口癖になっていて、自分ではおかしいと思っていなかったんでしょうね。それで、あなたはどうしました」

「『関係性』がおかしいので、『関連性』に改めるように言ったんですが」

「まだ、何かあったんですか」

「いえ、そう改めたものを再提出したら、なぜわざわざ『関連性』に置き換えるのかと聞かれて、絶句したと言うのです」

「なかなか鋭い部長ですね」

「そのようです。部長は更に続けて『〈○○性〉という言い方が格好いいと思うから関連性としたのだろうが、ここは〈関係〉だけですむところだろう』と言ったそうです」

「部長のお説のとおりですが、『関連性』を使うのは、必ずしも間違っているわけではありません。もっともこの文書の場合は『関連』だけですみますがね」

「なぜ『関係性』がいけないんでしょうか」

「付けなくても通用する言葉に、無用の接尾語を付けるなということです。『関連』のほうは『二つの事件には関連性が見られない』などと使いますので、国語辞典にも用例として認められています」 

川本 信幹

著書に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。2011年11月逝去

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