その日本語、相手を不快にします

今回は、海千山千(ここでは善意で使っているのです)、甲羅を経た皆さんには必要のない話です。

ビジネスの世界に飛び込んだ若い人が面食らうのは、さまざまな誘いの、時には誘惑と言ってよいような機会にしばしば遭遇することです。 相手も、取引先の社員・社内の上司・同僚・後輩・社内の女性などさまざまです。

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①「いかがですか、取引が成立したら一度ゴルフのお手合わせを
②「君、今度の日曜日、ゴルフを付き合わないかね」
③「おい、今夜いっぱいどうだ」
④「今度の社員旅行、絶対参加しろよ」
⑤「先輩、若手でゴルフコンペを企画してるんですが、お付き合い願えませんか」
⑥「○○さん、今夜空いてますぅ」

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とまあ、誘いの種類も際限がありません。

こういう場合、承諾の返事は簡単ですが、断るにはいささかの心遣いとテクニックが必要です。

①の場合は、下手に断ると次の取引に影響しますから、その場では、「ありがとうございます。その節はよろしくお願いします」と諾否を曖昧にしてつないでおきます。

②の場合は、「ありがとうございます。あいにく今度の日曜日はよんどころない事情がございまして」とか「余儀ない事情かございまして」と言えば、相手が「よんどころない」「余儀ない」の意味を正しく理解していれば納得してくれるでしょう。「よんどころない・余儀ない」は、「そうするより他はない、そうする以外に方法がない」という意味です。

③などは断りにくいところですが、よほど親しい上司ならば「いえ、今日は野暮用がございまして」と言っておけば、野暮な質問はしないで別の人を誘うでしょう。

④の場合は、「いや、よんどころない事情があって」とか「その日曜日に妻の実家の法事があって」とかで勘弁してもらいます。

⑤は、日が決まっていれば②と同じ言い方で凌げますが、「先輩の都合のいい日に」などと言われたら、 逃げられません。先手を打って「左肘を痛めていて、このところゴルフにはご無沙汰しているよ」などと逃げを打っておきましょう。

⑥は、微妙なお誘いですから、断るなら言質を取られないように上手にやってください。

川本 信幹

著書に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。2011年11月逝去

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