その日本語、相手を不快にします

近年、曖昧な言葉遣いが多くなってコミュニケーションに齟齬をきたすことがしばしばあります。
例えば、「結構です」が肯定と否定と両方に使われます。

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「君ぃ、今晩付き合わんかね」

「結構です」

「えっ、都合が悪いのかね」

「いえ、お付き合いします」

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この場合、誘いを受けるのでしたら、せめて「結構ですね」と言いたいものです。
「結構です」の代わりに「大丈夫です」という人もいますが、若者言葉としては、否定の意味に使う人もいるので要注意です。

あまりにも内容不明で、相手を困惑させるのは「分かりません」です。

ある会社の若い社員から、次のような会話のあったことを聞きました。 外出中の部長から電話です。

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「課長はいるかね」 

「いえ、いらっしゃいませんが」

「どこへ行ったかね」

「分かりません」

「そうか」

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部長は、急いでいたらしく、それで終わりましたが、部長が帰社してからが大変でした。

まず、課長が脂を絞られました。

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「自分の所在を部下に言っておけ。それに、あの若い者の『分かりません』はなんだ。ちゃんと教育しておきたまえ」

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というわけで、矛先は課員(前記若い社員)に向きます。

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「先生、ああいう場合何と答えればいいんでしょうか」

「なんだ、課長は教えてくれなかったのかね」

「そうなんです。『どう答えればいいか、自分で考えろ』と怒鳴られただけです」

「自業自得だね。まず、『分かりません』がいけないね。本当に知らないのなら、まず『私は、存じませんが、と受けて、『ただちに確認いたします』と続ければいい。だいたい、ビジネスの世界で安直に『分かりません』を使うと、相手に軽く見られるだろうね」

「なるほど」

「さらに言えば、本当に知らない場合も、『存じませんが』などと言わなくてもいい。すぐに『ただ今確認いたしますからお待ちいただけますか』とやればいい」

「『待てない』と言われたらどうしますか」

「『ただ今確認して、折り返しお電話いたします』くらいのことは言えなければならないね」

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川本 信幹

著書に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。2011年11月逝去
*この原稿は、2011年に執筆したものです。

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