その日本語、相手を不快にします

課長 「先週頼んだ、わが社の製品と競合する他社の製品のレポートは明日までにできるだろうな」

課員 「はい、なんとか間に合わせます」

課長、一瞬厳しい表情になって、何か言いたそうであったが、ぐっと言葉を呑み込んだ。

さて、課長は、何を言いかけてこらえたのでしょうか。「厳しい表情になって」「ぐっと言葉を呑み込んだ」をヒントにして想像してみてください。
以下にいくつか例を挙げてみましょう。

例① 「なんだ、まだできていないのか。なにをぼやぼやしているのかね」

例② 「『なんとか、間に合わせます』とはなんだ。そんなやっつけ仕事では会議でぼろが出るぞ」

例③ 「えっ、まだできていないのか。先週頼んだのに何をしていたんだ」

例④ 「おいおい、それじゃあ一夜漬けというわけか。それで、クライアントに説得力のあるものができるのか」

例⑤ 「こういう仕事を『なんとか間に合わせます』では、いけない。そういうのを間に合わせ仕事と言って、無責任な仕事の象徴だ」

例⑥ 「『なんとか』では困るよ。「絶対に」間に合わせたまえ。どうせ課長は締切のサバを読んでいると思っているかもしれないが、それは、検討のゆとりを取っているんだ。それは君のための時間ではないぞ」

ここに挙げた課長の言葉は、まだまだ序の口で、気の短い課長ならこの程度直ちに口に出すでしょう。いやこれだけではすまないで、もっときつい第二弾、第三弾が飛んでくるでしょう。

「なんとか、間に合わせます」という言い方がなぜまずいかは、例①から例②の中に述べられています。

<@>冷静で、部下思いの課長ならば、次の日、レポートを無事提出した部下に「なんとか、間に合わせます」という言い方がなぜいけないかを丁寧に説明し、望ましい言い方を指導するでしょう。

この場合の望ましい言い方は、
「はい、明朝九時に提出いたします」
「はい、明朝間違いなく」

といったところでしょう。
余計な御託を並べるより、すっきりした返事でいいのです。そして、間違いなく提出することです。

川本 信幹

著書に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。2011年11月逝去
*この原稿は、2011年に執筆したものです。

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