その日本語、相手を不快にします

ある会社の人事担当者から、「最近の新入社員には、どうも君が多くて困ります」というぼやきを聞いたことがあります。

「どうも君」とはテレビのキャラクターの名前ですが、ここではどのような場合でも挨拶を「どうも」だけで済ませる人のことを言うのでしょう。 

いつぞや、拙宅に出入りする若い者から「亡くなった方の遺族に対して挨拶するのに『このたびはどうも』と言いますが、その後は何と言えばいいんでしょうか」と聞かれたことがあります。

たしかに、そういう場面に親か上司にでも同道して正式の挨拶の文言を聞かなければ、勉強する機会はないでしょう。 「このたびはどうも」で済ませてしまうと、言葉にうるさい相手の場合は、内心で「なんと挨拶の言葉も知らないのかしら」とでも蔑むに違いありません。 

ありふれた言い方ですが「このたびはどうもご愁傷様でございます」とか、続けて「さぞお力落としのことでございましょう」とか言えば、まずまずでしょう。 ごく親しい間柄では「先日はどうも……」「昨晩はどうも……」という省略形でもコミュニケーションは十分成り立ちます。

しかし、ビジネスの世界では、それだけでは意志が通じないこともあり、相手に軽く見られることさえあります。「どうもどうも……」などは絶対に使ってはなりません。

身分の上位の相手、あるいは心理的に距離のある相手に感謝・謝罪の意を表する場合はそれぞれのケースに応じた適切な表現を加える必要があります。

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[感謝の例]
◆過日はどうも過分なおもてなしをいただき恐縮至極に存じました。
◆昨日はどうも遅くまでご指導を賜り、部員になり替わり厚くお礼申し上げます。
◆昨日はどうもご多用にもかかわらずご来駕たまわり社員一同感激いたしました。

[謝罪の例]
◆先日はどうも差し出がましいことを申しまして、失礼いたしました。
◆このたびはどうも不躾なお願いをいたしまして申し訳ございません。
◆先ほどはどうもとんでもない不始末をしでかしまして、お詫びの申し上げようもございません。

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川本 信幹

著書に「日本語 鵜の目鷹の目烏の目」、「みがこう,あなたの日本語力」(以上、東京書籍)、「生きるための日本語力」(明治書院)など。2011年11月逝去

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