随時更新中!レフト鈴木の日本語お笑い道場

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少し遅くなりましたが、皆さん明けましておめでとうございます。この「日本語道場」も、なんと3年目に突入です。始めた時は正直、1年くらいで終わってしまうのではないかと思っていましたが、気づけば丸2年が経ちました。今年も皆さんと一緒に楽しく日本語を学んでいきたいと思いますので、よろしくお願いします。

話は変わりますが、僕と仲の良い芸人の間で一時期「ある言葉の逆の意味の言葉を考える」という遊びが流行りました。例えば「少年よ、大志を抱け」の逆は「少女よ、希望を捨てろ」、「吾輩は猫である。名前はまだない」の逆は「あなたは犬だ。名前はポチ」といった感じで、つまりは様々なフレーズの「対義語」を創作するという遊びです。

ある日ひとしきり盛り上がった後、僕はみんなに「じゃあ『レフト鈴木』の逆は何になる?」と聞いてみました。するとある芸人がこう答えました。「う~ん...『ライト田中』じゃない?」

僕はそれを聞いて、「いや、『レフト』の逆が『ライト』なのは分かるけど、なんで『鈴木』の逆が『田中』なんだよ!?」とツッコミを入れました。ですが、なぜかツッコんだ後、心の中で「でも『レフト鈴木』の逆が『ライト田中』って、なんかしっくりくるなぁ~」と思ってしまいました。皆さんはいかがでしょうか?

さて、今回は新しいシリーズをスタートさせようと思います。僕は、語彙を手っ取り早く増やすには、「対義語とセットで覚える」という勉強法が有効だと思います。言葉同士に繋がりを持たせた方が記憶に残りやすいと思うからです。

なので今回は、そんな対義語の関係にある二つの言葉の面白い使用例をいくつか作ってみました。題して「対義語を使ってみよう!」

「大綱(たいこう)⇔細目(さいもく)」

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~大物タレント田中とマネージャーの会話~
マネージャー「田中さん、来週のお仕事のオファーが来てるんですが、どうしますか?」
田中「どんな仕事?あ、全部聞くの面倒だから、大綱だけ教えてよ」
マネージャー「えっとですね、海外の海で泳ぐロケです」
田中「海外?いいねえ!やるよ。私ももう65歳になるけど、仕事で海外に行くってのはやっぱりいいもんだよ。海も好きだし」 マネージャー「分かりました!じゃあ、OKの返事しておきます!」

~1週間後~

ディレクター「それでは今回の企画『大物タレント田中太郎65歳が行く!ドーバー海峡を一人で泳いで横断!失敗したら命の保証はないぞスペシャル!』の撮影始めたいと思いまーす!いや~、まさか田中さんほどの大御所がこんな仕事を受けてくれるとは思ってませんでしたよ!あ、タイトルで言ってることは本気なんで、その辺りよろしくお願いしま~す」

田中「細目まで聞いておけば良かった...」

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「大綱」は「ある事柄の中の特に重要な点」や「おおよその内容」、「細目」は「一つ一つの細かい項目」のことです。

それにしても、田中さんはしっかりと内容を聞いてから返事をすべきだったと思いますが、マネージャーも伝え方もざっくりし過ぎですね。一応言っておきますと、これは「大物タレントの仕事の選び方って、こんな感じなんじゃないかな~」という僕の勝手な妄想で作られたネタです。実際はもっときちんと確認してから仕事を選ばれていると思いますよ。

もちろん僕達くりおねは、いただいたお仕事は何でもやりたいと思っているので、どんどんオファーくださいね!

「円熟(えんじゅく)⇔未熟(みじゅく)」

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子供「叔父さん、今日は漁に連れて来てくれてありがとう」
叔父「いいってことよ。魚釣ってる時の叔父さん、かっこよかっただろ?」
子供「うん!あんなにたくさんの魚を釣れるなんて、叔父さん、すごいや!円熟の域に達してるよ」
叔父「そうかそうか。よし、それじゃあ、早速さっき釣った魚をさばいて食わせてやろう」
子供「わーい!」
叔父「じゃあ、刺身と焼き魚にでもするかな。ちょっとあっちで待ってな」
子供「はーい!楽しみだなぁ。待ちきれないから台所を少し覗いてみよう。叔父さんが料理してるところも見てみたいし。どれどれ」
叔父「痛っ!指切っちまった。血が止まんねえ!ん?しまった!火力が強すぎて魚が燃えてる!しかも換気扇つけるの忘れてたから、煙で前が見えない。誰か助けてー!」
子供「料理の方は未熟だね...」

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『新明解国語辞典第7版(三省堂)』には、「円熟」は「芸・技術などが十分に上達し、内容が豊かになり、欠点の見られなくなること」、「未熟」は「学問・技芸・修養などがまだ十分でなくそのままでは世界に通用しない様子だ」とあります。

一般に漁師さんと言うと、魚を捕るだけではなく、さばいたり調理したりするのも上手いイメージですが、世の中に一人くらいはこういう漁師さんもいるのではないか?という、これまた僕の勝手な妄想から作ったネタです。

「無礼(ぶれい)⇔慇懃(いんぎん)」

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先輩「遅いな、あいつ。今日は大事な商談だから絶対遅れるなって言っておいたのに」
後輩「チィーッス。お待たせっす~」
先輩「チィーッスじゃねえだろ。挨拶くらいちゃんとしろよ。ていうか、今何時だと思ってんだよ」
後輩「今は午後の2時っすよ。え?先輩、時計も読めないんすか?」
先輩「そういうことじゃねえよ!1時半に待ち合わせって言っておいただろ!」
後輩「別によくないすか?30分くらい。マジ先輩って人間として器小さいっすよね」

先輩「何だと!前から言おうと思ってたけど、お前、先輩に対して無礼なんだよ!それでも社会人か!」
後輩「あー、うるさいうるさい。てか、こんなとこで揉めてる時間あるんすかぁ?」
先輩「お前のせいだろ!もういい、早く行くぞ」
後輩「はぁ~い」
先輩「全く。あれ?電話だ。もしもし、どうしたんだよ、佐藤?え?今日のナースとの合コン行けなくなった?マジかよ!?とりあえず今仕事中だから切るぞ。...困ったな。夜までに誰か代わりに行く人を見つけないと、せっかくの合コンが中止になっちまう」
後輩「あの...」
先輩「ん?何だよ」
後輩「その合コン、私に行かせていただけませんでしょうか?参加させていただくからには、後輩として先輩を立て、最高のパスを出させていただきますし、もしもタイプの女の子が先輩とカブってしまった場合には、もちろん身を引かせていただきます。あ、今更ではございますが、今までの先輩に対してのご無礼、深くお詫び申し上げます。何卒よろしくお願いいたします」
先輩「こんな時だけ慇懃になるな!」

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「無礼」は言うまでもなく「礼儀知らずなさま」、「慇懃」は逆に「極めて礼儀正しく丁寧なさま」です。

ちなみに、「うわべは丁寧すぎるほど丁寧だが、実は内心で相手を見下していることが感じられる様子」という意味の「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」という四字熟語もあります。

それにしても、とことん失礼な後輩ですね。最近先輩に対する礼儀がなっていない人が多いと聞きますし、自分の会社に似たような後輩や部下がいるという方も多いのではないでしょうか?この後輩の慇懃さもどこまで続くのか、分かったものではありません。いざ合コンとなったら先輩を差し置いてタイプの女の子をお持ち帰りしてしまいそうです。

今年一発目の日本語道場、いかがだったでしょうか?正直に言うと、去年の僕は芸人としても「売れず」、日本語検定1級にも「不合格」だったので、今年こそは芸人として「ブレイク」し、日本語検定1級も「合格」と、どちらも去年とは逆の結果を得たいと思います!

皆さん、2017年も一緒に頑張りましょうー!

レフト鈴木

1987年埼玉県生まれ。千葉大学卒業。お笑いトリオ「くりおね」ツッコミ担当(ワタナベエンターテインメント所属)。フジテレビ「日本語探Qバラエティクイズ それマジ!?ニッポン」、テレビ朝日「GURIGURIくりぃむ」、チバテレビ「Girl’s Pop’n Party」「おはYo! HIテンション」等に出演。2013年日本語検定1級に認定。
アメブロ:http://ameblo.jp/hidekasuzuki/
ツイッター:@leftsuzuki

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