随時更新中!レフト鈴木の日本語お笑い道場

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 もう季節はすっかり秋ですね。時間が経つのは早いもので、もう今年2回目の検定が迫ってきています。受検予定の皆さん、勉強は進んでいるでしょうか?もちろん僕も3度目の1級認定を目指して受検する予定なので、着々と準備を進めているところです。
 話は変わりますが、先日ある紳士服屋さんへ舞台衣装に使うためのワイシャツを買いに行きました。人前で着るものなので、安物ではなくちょっと高いワイシャツにしようと思い、割と高級なお店に行ったので、店員さんも接客がすごく丁寧でした。前回このコラムで取り上げたバイト敬語も一切使っていませんでしたし、「お客様はスタイルが良いのでこちらが似合うと思います」といった感じでさらりと褒めてくれたりもして、気分良く買い物ができました。
 ところが、会計の後でその店員さんが「出口までお送りします!」と、商品を持って付いてきてくれたまではいいのですが、そこからは急に話し方がぎこちなくなり、「いやぁ、最近はあのぉ、そのぉ、雨の日が多いですよねぇ。えっとぉ...」と言ったきり、後は黙ってしまいました。そこは大きなお店だったので出口まで30~40mくらいあり、その間はただただ気まずい空気が流れました。会計するまでは好印象だっただけに、少し残念でした。
 ところで、日本語には相手を褒める言葉が沢山あるように思います。例えば、女性の美しさを表す四字熟語だけでも、「曲眉豊頬(三日月型の眉とふっくらとした頬)」のように容貌を表したもの、「仙姿玉質(気品のある姿と玉のような肌)」のように全体の姿や雰囲気を表したもの、「沈魚落雁(魚が恥じらい身を隠し、雁が見とれて地に落ちるほどの美人)」のように美しさが超ハイレベルであることを表したものなど数多くあります。皆さんも口説き落としたい異性や取り入りたい上司などを、月並みな言い回しではなく、ちょっと難しい言葉で褒めてみたら、関係がぐっと親密になったりするのではないでしょうか?
 という訳で、今回は数ある四字熟語の中から褒め言葉として使えそうな言葉をピックアップし、それを盛り込んだミニコントを作ってみました。題して「難しい言葉で褒めてみよう!」



・「明眸皓歯(めいぼうこうし)」

美人を形容して言う言葉

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 元々は唐の詩人、杜甫が楊貴妃の美しさを形容した言葉で、「明眸」は美しく澄んだ瞳、「皓歯」は白く綺麗な歯のこと。「皓歯明眸」とも言います。


・「詠雪之才(えいせつのさい)」

女性の文学的才能を褒め称える言葉

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 東晋の時代の書道家、王凝之(おうぎょうし)の妻の謝道蘊(しゃどううん)が、降る雪を柳絮(りゅうじょ、柳の種)の白い綿毛に例えた詩を詠み、その文才を称えられたという故事から生まれた言葉です。


~カフェにて~

店員「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
女性「アイスコーヒーをお願いします」
店員「かしこまりました。あの、もしかしてお客様はモデルさんですか?」
女性「え?違いますけど」
店員「失礼しました。すごく美人でいらっしゃるし、何かどこかでお見かけしたことあるな~と思ったんですよ」
女性「ありがとうございます」
店員「そんな明眸皓歯なお客さんにだけ、サービスでこれ付けときますね」
女性「あら、嬉しい。何ですか?」
店員「ストローです」
女性「全員に付けなさいよ!サービスでも何でもないでしょ!」
店員「あと、これもサービスでプレゼントしますよ」
女性「もういいわよ。どうせ大したもんじゃないでしょ?ちなみに何なの?」
店員「このお店の経営権です」
女性「荷が重い!サービスであげていいもんじゃないわよ。結構です!」
店員「そうですか。それにしても、やっぱりどこかでお見かけした気がするんですよね。あ、分かった!小説家の方じゃないですか?この前有名な賞をお取りになりましたよね?」
女性「よくご存じでしたね。その通りです」
店員「僕も先生の作品を拝読しましたよ!すごく面白かったです!詠雪之才とはこのことを言うんだな~って思いました」
女性「そんな大げさですよ。でも、ありがとうございます」
店員「猫の視点から人間社会を鋭く風刺した『吾輩は猫である』。斬新な発想に驚きました!」
女性「それは夏目漱石でしょ!何と間違えてんのよ!?」
店員「猫と言えば、未来からやって来た猫型ロボットが不思議なポケットから道具を取り出して、いじめられっ子の小学生を助ける話。あれも凡人にはなかなか思いつかないストーリーですよね!」
女性「それは某国民的人気アニメでしょ!もはや小説ですらないし...。ていうか、アイスコーヒーまだなの?時間かかり過ぎじゃない?」
店員「申し訳ありません。うちのコーヒーにはこだわりがありますので」
女性「まあ、そういうことなら仕方ないわね」
店員「今急いで隣のコンビニに買いに行ってます」
女性「いや、この店のコーヒーじゃないんかい!?だったらコンビニ行くわ!」



・「八面六臂(はちめんろっぴ)」

一人で何人分もの働きをすること

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 阿修羅など三つの顔と六本の腕(「臂」は肘の意)を持つ仏像の形態から生まれた言葉で、「三面六臂」が元々の言い方です。後に多方面を表す「八面」を使って、「八面六臂」と言うようになりました。


・「破天荒解(はてんこうかい)」

今まで誰も成し得なかったことを初めて成し遂げること

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 「破天荒」とも言い、「荒くれ者」や「大胆で豪快な様子」の意味で誤用されることが多い言葉ですが、実際はこのような意味です。「天荒」は荒れ地または未開の土地の意で、「解」は科挙(昔の中国の公務員試験)の地方試験に受かった人のこと。唐の時代、荊州(けいしゅう)という所はなかなかこの地方試験に受かる人が現れず「天荒」と呼ばれていましたが、劉蛻(りゅうぜい)という人がその前例を破って初めて試験に受かったので、世間の人が「天荒を破った」と言って驚いたという故事から生まれた言葉です。


~野球選手のヒーローインタビューにて~

アナウンサー「放送席、放送席。本日見事サヨナラホームランを打ちました、田中選手です!」
田中選手「どうもー!」
アナウンサー「いや~、今日は打って守って走ってと、まさに八面六臂の活躍でしたね!今のお気持ちは?」
田中選手「最高でーす!」
アナウンサー「しかし、昨日の試合では4打席4三振、昨日の今頃はどんなお気持ちでしたか?」
田中選手「え?...そりゃあ最悪でした」
アナウンサー「それから、おとといの試合もエラーを連発していましたが、どんな気持ちでした?」
田中選手「...申し訳なかったです」
アナウンサー「それから、先週の試合では盗塁を失敗して...」
田中選手「もういいだろ!?今日の試合の話してくれよ!」
アナウンサー「まさに今日までは打てない、守れない、走れないの、『逆八面六臂』でしたね!」
田中選手「なんだよ『逆八面六臂』って!?そんな言葉ないわ!」
アナウンサー「ところで、今月のファン投票ではランキング連続1位記録を更新しましたね!おめでとうございます!」
田中選手「え?そうなんですか?ちなみに何のランキングですか?」
アナウンサー「『ホームランを打った後のドヤ顔*が鼻につく』ランキングです」(*得意げな顔、または自慢げな顔)
田中選手「どんなランキングだよ!?」
アナウンサー「いや~、あんなに鼻につくドヤ顔、私もアナウンサー歴長いですが、田中選手が初めてです。まさに破天荒解ですね!」
田中選手「嬉しくないんだよ!そもそもそんなランキングのテーマ、誰が決めたんだよ!?」
アナウンサー「私ですが、何か?」
田中選手「お前かよ!今すぐそんなランキング 廃止しろ!」
アナウンサー「それでは田中選手、明日もよろしくお願いしまーす!」
田中選手「お前はもう二度と来るな!」


 今回は「褒め言葉」に注目してお送りしましたが、いかがだったでしょうか?言い方にもよりますが、褒められて嫌な気分がする人なんてそうそういませんし、言った方も言われた方もなんだか清々しいですよね?なので、もし僕を見かけたら、「レフト鈴木さん、芸人として活動しながら、日本語に関するコラムも書いているなんて、まさに八面六臂の活躍ですね!」と声をかけてくださいね!あ、見かける機会がない方はSNSという手段もありますよー!

レフト鈴木

1987年埼玉県生まれ。千葉大学卒業。お笑いトリオ「くりおね」ツッコミ担当(ワタナベエンターテインメント所属)。フジテレビ「日本語探Qバラエティクイズ それマジ!?ニッポン」、テレビ朝日「GURIGURIくりぃむ」「『ぷっ』すま」、TBS「有吉ジャポン」、チバテレ「Girl’s Pop’n Party」「おはYo! HIテンション」等に出演。日本語検定1級に過去2回認定。
アメーバブログ:http://ameblo.jp/hidekasuzuki/
ツイッター:@leftsuzuki
ユーチューブ:https://www.youtube.com/channel/UCLBQrhXN7UsOA2V50oTCqMg

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