随時更新中!レフト鈴木の日本語お笑い道場

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 朝の情報番組を見ていると、決まってランキング形式の占いをやっていますよね。番組によって、星座だったり血液型だったりと違いはありますが、つい気になって見てしまいます。ただ、僕の場合、順位もさることながら、それ以上にその後のコメントが気になっています。例えば「A型のあなた!今日は思わぬミスをしそうだから気をつけて!」とか、「さそり座のあなた!今日は新しいことを始めるには最適!」とか、何だか当たり障りのないことばかり言っている気がするからです。

 それくらいならまだいいのですが、先日「いて座のあなた!今日もしも目上の人にコーヒーをかけてしまったら...すぐに謝った方がいいかも!」というコメントを見た時には、「当たり前だろ!いて座の人だけじゃなくて、みんなそうだよ!」と、朝からツッコんでしまいました。

 あと、ある局の番組で、最下位を発表する前に女性アナウンサーが言う「ごめんなさぁ~い」という謎の謝罪も気になります。謝るくらいなら最初から順位なんて発表しなきゃいいのにと、いつも思ってしまいます。

 別の日には更に気になることに、「ふたご座のあなた!今日は周りに愛嬌を良くすると好感度がアップするかも!」というコメントがありました。「愛嬌をふりまく」「愛想が良い」などの慣用句はありますが、「愛嬌が良い」とは一般的に言いません。時々聞かれる誤用ですね。

 さて、今回も引き続き、僕の作った各ショートストーリーの中に、「愛嬌が良い」のような言い方を間違えている慣用句を一つずつ紛れ込ませてみましたので、どれが間違った慣用句か考えながら読んでみてください。題して「慣用句の間違いを探そう!」

第1問

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~中学校にて~

教師「おい田中。何度言えば分かるんだ。ちゃんと授業を聞け!」

生徒「うるせえな。授業なんてつまんねえんだよ!勉強なんて絶対やらないからな。まあ、あごが崩れる程笑っちまうような話でもしてくれるなら聞いてやってもいいけどよ」

教師「お笑い芸人じゃあるまいし、そんなことできるわけないだろう。あと、昨日小耳に挟んだんだが、また同級生と喧嘩したらしいじゃないか。いつまでもそんなことしていたら、いつか一人ぼっちになっちまうぞ」

生徒「上等だよ!俺は一人で生きていくんだ」

教師「あのなあ、田中。いいか。『人』という字はだな...」

生徒「人と人が支え合っている、とか言うんだろ。よくそんな手垢にまみれた説教ができるな」

教師「よく見たら、『入』っていう字に似てるよな」

生徒「...だから何なんだよ!?意表に出るなよ!」

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 正解(間違っているもの)は「あごが崩れる」です。「おかしくて大笑いする」という意味の「あごが外れる」という慣用句はありますが、「あごが崩れる」とは一般的に言いません。ちなみに、「あごが落ちる」と言うと、「とても美味しい」という意味になります。

 「小耳に挟む」は「ちらっと聞く」ことで、きっとこの先生は職員室かどこかで他の先生同士が話しているのを聞いたのでしょう。

 「手垢にまみれる」は「使い古されて陳腐になる」ことで、「手垢がつく」という言い方もあります。

 「意表に出る」は「相手が思いも及ばなかった行動に出る」ことで、「意表を突く」と同じ意味の慣用句です。

 それにしても、この先生は何が言いたかったのでしょうか?「喧嘩ばかりしていると内申点が悪くなって、高校にれなくなるぞ!」とでも続けるつもりだったのでしょうか?いずれにしてもお説教が下手過ぎますね。世の先生方には、この先生を良い「反面教師」にしてもらいたいものです。

第2問

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~病院にて~

医者「石田さん。今回の検査の結果が出ましたのでお伝えします」

患者「先生、一体僕の病気は何なんですか?検査をしてから今までずっと、もしかしたら命に関わる病気なんじゃないかと、胸が騒いでいるんです」

医者「実は、石田さんの病名は非常に言いにくいんです」

患者「そんな奥歯に物が挟まったような言い方しないでください。僕は昔から蒲柳の質で病気になりやすかったですし、覚悟はできています」

医者「分かりました。申し上げます。石田さんの病気は...こつしょしょうしょう...もとい、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。ああ!言いにくい」

患者「言いにくいってそういう意味かよ!腕をなで下ろしたわ!」

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 正解は「腕をなで下ろす」です。「安心する」という意味の「胸をなで下ろす」という慣用句はありますが、「腕をなで下ろす」とは一般的に言いません。

 「胸が騒ぐ」は「不安や期待で心が動揺する」という意味で、この問題では「胸をなで下ろす」とは逆の「心配する」の意味で使われています。また、「胸騒ぎ(がする)」の形で用いる場合は、悪い(「不安」の)方の意味でしか使えないので、要注意です。

 「奥歯に物が挟まったような」は「何か隠しているような曖昧な言い方をする」ことの例えです。「奥歯に衣(きぬ)着せる」という言い方もあるようです。反対の意味を表すのは「歯に衣着せぬ」です。

 「蒲柳(ほりゅう)の質」は「病弱な体質」のこと。「蒲柳」はカワヤナギのことで、カワヤナギの葉が落ちるのが早いことから、虚弱体質の例えに使われるようになったそうです。

 それにしても、紛らわしい言い方をするお医者さんですね。確かに「骨粗鬆症」は言いづらい言葉だとは思いますが、正式な病名にはもっと言いづらそうな言葉があるのではないかと思ったので調べてみました。すると、「中心性漿液性網脈絡膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいもうみゃくらくまくしょう)」「慢性絞扼性心外膜心膜炎 (まんせいこうやくせいしんがいまくしんまくえん)」等、いかにも言いづらそうな言葉がたくさん見つかりました。

 僕たちお笑い芸人も、ネタの途中でつかえたりすることはもちろん許されませんが、時として、失敗した場面が一番ウケてしまい、却って会場が盛り上がってしまうこともあります。しかし、お医者さんが告知の時に「もうみゃくりゃく...みゃくらくまきゅ...」なんて言っていたら、「この先生、大丈夫かな?」と、無駄に患者さんの「胸が騒いで」しまうだけでしょうから、専門家であるお医者さんたちには、つかえずにスラスラと言って欲しいものです。

 さて、今僕は、この原稿を無事書き終えられたので、ほっと腕をなで下ろしているところです。今回は2問出題しましたが、正解できたでしょうか?僕も皆さんの意表に出るオチになるよう頑張ってみたので、その通りになってくれていたら嬉しいです。(実は、この最後の段落にも、間違えて使っている慣用句がありますよ!答えはこのコラムを注意して読めば分かるはずなので、是非もう一度読み返してみてくださーい!)

レフト鈴木

1987年埼玉県生まれ。千葉大学卒業。お笑いトリオ「くりおね」ツッコミ担当(ワタナベエンターテインメント所属)。フジテレビ「日本語探Qバラエティクイズ それマジ!?ニッポン」、テレビ朝日「GURIGURIくりぃむ」、チバテレビ「Girl’s Pop’n Party」「おはYo! HIテンション」等に出演。2013年日本語検定1級に認定。
アメブロ:http://ameblo.jp/hidekasuzuki/
ツイッター:@leftsuzuki

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